第37章 彼は後ろめたさを感じていない

病院の外に着くと、霧島冬真は夏目星澄がまだ一言も発しないのを見て、彼女が祖母の先ほどの言葉を気にしているのだと思った。

「子供を作ることについては、プレッシャーを感じる必要はないよ。結婚した日から祖母は催促してきたけど、いつも言い訳して断ってきたんだ。今回も気にしなくていい。」

夏目星澄は真剣に考えてから、頷いて言った。「今の私たちの状況では、確かに子供を作るのは適切ではないわ。祖母には申し訳ないけれど。」

霧島冬真の目が暗くなり、意味深げに尋ねた。「私たちの、どんな状況?」

夏目星澄は「もちろん離婚することよ。今子供を作って、生まれてから離婚するなんて、子供に対して不公平すぎるわ。だから早めにこの件を決めて、祖母の病気が良くなってから説明した方がいいと思う。」

霧島冬真は深い目で夏目星澄を見つめ、冷たく尋ねた。「そんなに私と離婚したいのか?」

彼は、これだけ時間が経って離婚の話を持ち出さなくなったのは、考えを改めたのだと思っていた。

夏目星澄は俯き、苦しそうに息を吸い、熱くなった目を瞬かせた。乾いた目からは一滴の涙も落ちず、最後に落ち着いた声で言った。「あなたと梁川千瑠の邪魔をしたくないだけよ。」

霧島冬真は彼女の強情で冷たい様子を見て、目の奥に突然暗い光が浮かんだ。「夏目星澄、まるで私が浮気でもしたかのように言わないでくれ。この結婚生活で完璧とは言えないが、少なくとも後ろめたいことはない。」

夏目星澄は顔色を失った。つまり、すべては彼女の考えすぎだったということ?

でも彼の梁川千瑠に対する態度は明らかに特別なのに…

霧島冬真の目が次第に冷たくなり、やや高圧的な態度で言った。「わかっている。この三年間、あなたは周りの悪い結婚生活を見てきた。特に『家庭では赤旗が倒れず』、外では『色とりどりの旗が翻る』ような家庭を見て、少なからず影響を受けたんだろう。」

「そのため、梁川千瑠の出現であなたは危機感を感じたのかもしれない。でもはっきり言っておく。私はそんなことはしないし、そんな行為を軽蔑している。」

夏目星澄は暫く黙った後、ゆっくりと顔を上げ、かすれた声で尋ねた。「じゃあ、これからは梁川千瑠と距離を置いてくれる?」