水野文香の言葉に、早川奥様は返す言葉もなかった。
これ以上話を続けても自分の恥をさらすだけだった。
そこで気まずく笑って、「ええ、おっしゃる通りです、その通りです...」
最後に時間となり、来客たちは次々と帰っていった。
梁川千瑠だけがまだ諦めきれず、最後まで残って霧島冬真と二人きりで話がしたいと思っていた。
しかし夏目星澄が彼女に霧島冬真に近づく機会を与えるはずがなかった。
「梁川さん、もう遅いですから、お送りしましょう。」
「急ぎませんから、冬真さんを待ちます。」
「彼はあなたを見送りには来ませんよ。」
梁川千瑠は見送りをしている霧島峰志を一瞥し、得意げに笑った。「水野おばさんがあなたの味方だからって、調子に乗らないでください。この家は霧島家なんです。霧島おじさんは私の味方で、ずっと私のことを嫁として見てくださっているんですから。」
夏目星澄は、霧島峰志が自分に対して冷たい態度をとる理由が、きっと梁川千瑠と無関係ではないと思い至った。
きっと陰で悪口を言って、自分のイメージを壊していたのだろう。
当初、霧島冬真との入籍の際、霧島峰志は反対はしなかったものの、支持もしなかった。
しかし今の態度を見れば明らかに、自分のことを嫁として気に入っていないのは明白だった。
そうでなければ、水野文香が自分の身分を公表した時に、あれほど不機嫌になることもなかったはずだ。
夏目星澄は拳を握りしめ、一瞬にして氷のように冷たい口調になった。「それがどうしたというの?あなたが霧島おじさんにどれだけ気に入られていても、私は霧島冬真の合法的な妻です。それは動かしようのない事実で、あなたにはただ傍観することしかできないのよ。」
「ここで騒ぎを起こさない方がいいわ。今日は私の義母の誕生日なの。不愉快な思いはしたくないわ。自分で帰るか、警備員に送り出してもらうか、どちらかを選んでください!」
そのとき水野文香は夏目星澄と梁川千瑠が一緒にいるのを見つけ、いじめられているのではないかと心配して急いで近寄ってきた。「星澄、どうしたの?」
梁川千瑠は水野文香にまた叱られたくなかったので、夏目星澄に恨めしい目を向けてから、その場を去った。
水野文香は夏目星澄を上から下まで見渡して、「大丈夫だった?」
夏目星澄は首を振って、「お母さん、大丈夫です。」