水野文香の言葉に、早川奥様は返す言葉もなかった。
これ以上話を続けても自分の恥をさらすだけだった。
そこで気まずく笑って、「ええ、おっしゃる通りです、その通りです...」
最後に時間となり、来客たちは次々と帰っていった。
梁川千瑠だけがまだ諦めきれず、最後まで残って霧島冬真と二人きりで話がしたいと思っていた。
しかし夏目星澄が彼女に霧島冬真に近づく機会を与えるはずがなかった。
「梁川さん、もう遅いですから、お送りしましょう。」
「急ぎませんから、冬真さんを待ちます。」
「彼はあなたを見送りには来ませんよ。」
梁川千瑠は見送りをしている霧島峰志を一瞥し、得意げに笑った。「水野おばさんがあなたの味方だからって、調子に乗らないでください。この家は霧島家なんです。霧島おじさんは私の味方で、ずっと私のことを嫁として見てくださっているんですから。」