梁川千瑠はケーキを受け取り、涙を笑顔に変えて「ありがとう、霧島おじさん」と言った。
彼女は心の中でよく分かっていた。水野文香の支持が得られないなら、霧島峰志にしがみつくしかない。
結局、梁川家と霧島家は深い関係があるのだから。
この関係さえあれば、夏目星澄より百倍も優位に立てる。
霧島峰志は頷き、また来客たちに社交辞令を述べた。
皆がグラスを上げ、水野文香の誕生日を祝った。
これで誕生日パーティーは一段落した。
梁川千瑠は切り分けられたケーキを持って真っ直ぐに霧島冬真の前に行き、可愛らしく艶のある顔に少し恥じらいを浮かべて「冬真さん、このケーキ大きすぎて私一人では食べきれないわ。捨てるのはもったいないから、少し食べてくれない?」
「だめよ」
この言葉は霧島冬真ではなく、彼女の後ろに立っていた夏目星澄が言ったものだった。