第48章 一言の不満も漏らさなかった

夏目星澄は全身が麻痺したかのように冷たく、何も感じなくなっていた。

ぼんやりとした意識のまま部屋に戻った。

ドアを閉めた瞬間、胸が突然痛み、全身の力が抜け、ドアに寄りかかったまま床に崩れ落ちた……

目が熱くなり、胸の痛みと喉の奥に押し込められた苦しみが一気に込み上げ、彼女を崩壊寸前まで追い込んだ。

霧島冬真は三年前の水さえ飲むのに介助が必要な患者ではもうなかった。

彼は霧島家の若殿様であり、霧島グループの社長だった。

そして霧島冬真は永遠に知ることはないだろう、彼に愛されるために、彼女がどれほど必死に努力したのかを。

もっと多くのことをすれば、感動と温もりが少しずつ積み重なって、いつか彼が振り向いたとき、彼女の良さに気づいてくれるかもしれないと思っていた。

でもその日が来る前に、梁川千瑠が帰国してしまった。