第50章 最悪な生まれた家庭

朝食の後、霧島冬真は会社へ出勤し、水野文香は友人に会いに行った。

夏目星澄だけが今日は休みだった。

しかし彼女も暇ではなく、キッチンで少し忙しく過ごした後、作ったお菓子を持って病院にいる祖母を見舞いに行った。

祖母が病気になってもう半月近く、彼女はとても心配していた。

医者に聞いても、老人特有の病気だから養生すれば良くなると言うだけだった。

病室に着くと、登坂萌乃は本を読んでいた。

夏目星澄は笑顔で近づき、「おばあちゃん、お菓子を作ってきたわ。食べてみて」と言った。

登坂萌乃は夏目星澄が来たのを見て、本を脇に置き、嬉しそうに言った。「ありがとう。ちょうどお腹が空いてきたところよ。あなたは本当におばあちゃんの大切な孫だわ」

夏目星澄は登坂萌乃が美味しそうに食べる様子を見て、自分も嬉しくなった。

彼女は普通の家庭の出身で、この家族のためにできることは本当に少なかった。こういった小さなことで気遣うことしかできなかった。

夏目星澄は傍らのリンゴの皮を剥き始めた。

皮を剥きながら、朝の霧島峰志の不満げな態度のことを考えていた。

今はまだ言葉だけだ。

きっとそう遠くないうちに追い出されることになるだろう...

「あっ!」夏目星澄は不注意で指を切ってしまった。

登坂萌乃はすぐに気付いて心配そうに言った。「星澄、大丈夫?ひどくない?おばあちゃんに見せて」

指から少し血が出ただけで、夏目星澄はすぐにティッシュで止血した。

「大丈夫よ、おばあちゃん。小さな傷だから、後でバンドエイドを貼れば良いの」

しかし登坂萌乃の目には、彼女の傷は指だけではないように見えた。

そこで心配そうな声で尋ねた。「星澄、どうしたの?何か悩み事があるみたいだけど。冬真があなたをいじめているの?」

夏目星澄は無理に笑って、「いいえ、彼は優しいわ」と答えた。

しかし登坂萌乃から見ると、それは優しいとは思えない様子だった。

「星澄、もし冬真が本当にあなたをいじめているなら、必ず私に言ってね。決して自分を苦しめないでほしいの」

「はい、わかってます、おばあちゃん。安心して、私は自分を苦しめたりしませんから」

もう少し祖母と話をして、疲れて休む必要があると分かった時、夏目星澄は名残惜しく別れを告げた。