夏目星澄は苦しそうな表情で通りのベンチに座っていた。
霧島冬真からのLINEは、彼女にとって打撃であり、同時に解放でもあった。
今度こそ、本当に霧島冬真との関係を断ち切らなければならないことを、彼女は分かっていた。
メッセージを返信し、スマートフォンをバッグに戻すと、両手で膝を抱え、顔を埋めた。
できることなら、誰も知らない場所で新しい人生を始めたかった。
霧島冬真も、彼女を苦しめる夏目家の方々も、そして極限まで屈辱的な侮辱も、何もない場所で。
どれくらい時が経ったのか分からないが、夏目星澄は涙を拭い、区役所の前で待つ準備をした。
しかし立ち上がった途端、目の前が暗くなり、世界が回り始めた。
数秒後、意識を失った。
目が覚めた時、周りは消毒液の匂いで満ちていた。
病院だった。