一時間後、龍城レジデンスにて。
ドアベルが鳴った。
焦りながら待っていた家政婦は、ほとんど走るようにしてドアを開けに行った。
この一時間は本当に息が詰まるような時間だった。霧島冬真の顔は鍋底のように真っ黒で、彼女は大きな息すら吐けなかった。
ようやく救世主が来た。
しかし、ドアを開けて来訪者を見た途端、浮かべかけた笑顔は凍りついた。
霧島冬真もちょうどリビングから出てきたところで、家政婦が黄色い制服を着て書類バッグを持った若い男性を案内してくるのを目にした。
彼の顔色は一瞬にして土気色になった。
若い男性も霧島冬真から放たれる冷気に怯え、緊張して手の書類バッグを握り直した。「あの...霧島さんでしょうか?これは夏目さんが届けるようにと依頼された物です。お客様の携帯に確認コードが届いているはずですが、確認させていただけますでしょうか?」