第102章 一躍成名

夏目星澄が参加した番組は歌唱競演系の新しいバラエティー番組だった。

そのため、招待されたのは大御所の歌手や三、四流のタレントばかりだった。

そうでなければ、夏目星澄のようなネットで人気を得た歌手も招待されることはなかっただろう。

番組は生収録で、オンライン投票方式を採用していた。

得票数の多い人が残り、少ない人は自然と脱落していく。

夏目星澄は第3回の補欠として参加した。

その時には番組もある程度の人気を得ていた。

現場投票のために100名の観客まで招待していた。

夏目星澄はネット上である程度の知名度があったものの、芸能界ではまだデビューしたばかりの新人だった。

番組に残れるかどうかは未知数だった。

番組収録が正式に始まった。

夏目星澄は最後から2番目の出演だった。

客席の観客はすでに疲れており、夏目星澄のことも知らないため、歌を聴く意欲は最低限だった。

中にはスマートフォンを取り出してゲームを始める人もいた。

薄暗い照明の中、夏目星澄は深く息を吸い込んだ。

たとえ誰一人として支持してくれる人がいなくても、彼女は全身全霊を込めて一曲歌い切るつもりだった。

これは彼女が正式に多くの観客の前で歌う最初の曲で、絶対に上手く歌いたかった。

優雅なイントロがゆっくりと流れ始めた。

客席の観客はまだ反応を示さなかった。

「この人誰?知らないんだけど、なんでこの番組に呼んだんだろう」と文句を言う人もいた。

「そうよね、もう2時間も経ってるのに、まだ終わらないの?疲れちゃった、家に帰って寝たいわ。正直言うと、私は田中志保のために来ただけだから、彼女の歌が終わったら帰りたかったの」

「私は早川希生先生のために来たの。母が若い頃から彼女の歌が好きだったから。番組終了後にサインがもらえるから待ってるだけで、そうじゃなければこんな遅くまで待ってないわ」

「でも夏目星澄って名前、どこかで聞いたことがあるような気がする」

「そう言えば私も覚えがある。確か前はスターって名前で、ネット歌手だったよね。歌がすごく上手いって聞いたことがあるし、ランキングも独占したことがあるらしい」

「マジで?そんなにすごいの?」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、夏目星澄の歌声が響き渡った。

「全ての夢を背負って、この歓楽の場へと歩み入る」