暗くなるまで、夏目星澄は適当な物件を見つけることができなかった。
今夜はホテルで数日間しのぐしかないようだ。
チェックインを済ませたところで、林田瑶子から電話がかかってきた。「星澄、今どこにいるの?」
「外で食事してるわ、どうしたの?」夏目星澄は東條煌真のサプライズを台無しにしたくなかったので、何も知らないふりをした。
「別に、さっき帰ったら東條煌真がいてね、サプライズまでしてくれたの。びっくりして死ぬかと思った。後で君が出張で数日いないって聞いたけど、どうして前もって教えてくれなかったの?」
夏目星澄は林田瑶子の口調から、文句を言っているものの、心の中では嬉しくて仕方がないのだろうとわかった。
それなら二人の世界を邪魔するわけにはいかない。
「会社が急に決めたことで、私も今知ったところよ。東條煌真が帰ってきたなら、二人でゆっくりお祝いしてね。」
林田瑶子は少し恥ずかしそうに言った。「もう、付き合って3年以上なのに、お祝いなんて…」
「あなたのことはよく分かってるわ。口ではそう言ってても、心の中では彼に会いたくて仕方なかったんでしょう?この3年間ずっと遠距離恋愛だったんだもの、一緒にいられる時間は貴重よ。」
確かに家は彼女と林田瑶子の共同出資で買ったものだけど、霧島冬真との離婚が成立するまでは、ずっと林田瑶子が一人で住んでいた。
彼女の彼氏は年に2回しか帰ってこず、その時も数日しか滞在しなかった。
でも今、自分が引っ越してきたことで、少し気まずい状況になってしまった。
「うん、わかったわ。じゃあ、あなたが戻ってきたら、彼と一緒にご馳走するわね。」
電話を切ると、東條煌真は我慢できずに後ろから林田瑶子を抱きしめた。「ねえ、これで安心したでしょう?僕は嘘をついてないよ。君の親友が自分から出て行くって言ったんだ。」
林田瑶子は腰に回された手を軽く叩いた。「なによ、星澄は私のことを思って、私たちの遠距離恋愛が大変だってわかってくれて、自分から時間と空間を譲ってくれたのよ。」
「はいはい、全部僕が悪かった。謝るから許してくれない?ねえ、僕たち久しぶりだよね。僕のこと恋しくなかった?」東條煌真は謝りながらも、手は林田瑶子の体を探り始めた。