第121章 この結婚は取りやめにしましょう

霧島冬真は大谷希真に仕事の指示を出していたとき、突然彼の携帯が鳴り出した。

大谷希真も驚いた。マナーモードにするのを忘れていた。

しかし携帯を開いてみると、なんと夏目星澄からの着信で、すぐには切れなかった。

「霧島社長、若奥様からのお電話です。」

「スピーカーフォンで出ろ。」

霧島冬真は、夏目星澄が何の用事で自分に電話せず、助手に電話をしたのか知りたかった。

大谷希真が電話に出ると、彼女が薬を探しに来たことを知った霧島冬真の表情は一瞬で冷たくなり、黒い瞳に薄い霜が覆いかぶさった。

自分と一緒にいた時は、子供は要らないと言っていたのに。

離婚してたった一ヶ月余りで、もう他の男の子供を妊娠しようとしている。

花井風真と結婚するためなら、本当に手段を選ばないのだな!

夏目星澄の話をこれ以上聞きたくなくて、大谷希真に電話を切らせた。

夏目星澄は呆れた表情を浮かべた。ないならないと言えばいいのに、まるで自分が何か悪いことでもしたかのように、一言も言わずに電話を切るなんて。

まあいい、なければないで、明日また医者に行って新しい薬をもらおう。

ついでに手術はいつできるか聞いてみよう。

霧島冬真は深夜まで仕事を続け、家に帰りたくなかった。

そのままオフィスで一夜を過ごした。

翌朝になって、霧島峰志から突然電話がかかってきた。「冬真、実家に戻ってきてくれ。お前のいとこが花井家と結婚することになった。兄として、いとこの結婚相手を見極めてやってくれ。」

霧島冬真は早川晴乃の結婚に全く興味がなく、断ろうとしたが、突然ある可能性を思いついた。「どの花井家?」

霧島峰志は当然のように言った。「お前のいとこにふさわしいのは、市長の花井家以外にないだろう。手の空いている仕事は後回しにして、まず戻ってきてくれ。」

花井風真が早川晴乃と結婚する。

では彼と夏目星澄はどういう関係なのか?

霧島冬真は考えた末、実家に戻って様子を見ることにした。

彼が到着した時には、家の中にはすでに大勢の人が集まっていた。

霧島家の人々の他に、花井風真の両親、梁川千瑠も来ていた。

しかし当事者の一人である花井風真はいなかった。

これは興味深い状況だった。

早川晴乃と梁川千瑠は一緒に座り、姉妹のように楽しそうに話していた。