中毒事件は一段落を迎えた。
夏目星澄は家でもう一日休養を取った。
仕事に戻れそうだと感じた。
会社に戻ったばかりの彼女は、中で多くの人が買収や社長交代について噂しているのを耳にした。
夏目星澄は心の中で驚き、芦原雅子に何かあったのではないかと思った。
彼女は急いで社長室へ向かった。
その時、芦原雅子は誰かと電話中で、夏目星澄が来たのを見て頷き、先に座るように促した。
その後、電話の相手に言った。「娘の親権は絶対に手放すつもりはないわ。諦めなさい」
夏目星澄は親権という言葉を聞いて、思わず胸が締め付けられた。
彼女のお腹にもまだ子供がいて、すでに医者と連絡を取り、手術の準備をしていた...
芦原雅子は少し疲れた様子で椅子に座り、「ごめんなさいね、星澄。見苦しいところを見せてしまって」
夏目星澄は心配そうに尋ねた。「雅子さん、さっき親権のことを話していましたが、何か問題があったんですか?」
芦原雅子は悲しげな表情で言った。「星澄、もう隠すことはないわ。私、夫と離婚することにしたの。彼は愛人を作っただけでなく、株取引やギャンブルで数十億の借金を作って、債権者がもう押し寄せてきているの」
夏目星澄は思わず声を上げた。「どうしてそんなにお金を借りることになったんですか」
芦原雅子は顔を覆い、苦しそうな声で言った。「あの愛人のせいよ。彼は息子が欲しがっていたの。でも私は娘を産んだ時に大出血して命を落としかけて、産後の養生もできなかったから、体が二人目を妊娠するのに適していなかった。命を懸けて妊娠したとしても、必ずしも男の子とは限らないでしょう。結局は、彼が男児を重視し過ぎているのよ」
「その後、彼は愛人を作ったわ。私も前からわかっていたけど、子供のために目をつぶっていた。娘に知られなければそれでよかったの。でもあのバカが愛人にだまされて、投資だなんだと言って何千万も注ぎ込んでしまって」
「最後には私たちの結婚資金まで密かに抵当に入れたけど、結局全部損してしまった。それから高利貸しからお金を借りて株取引を始めたけど、株式市場はリスクが高くて、また大金を失って、高利貸しに追われて地方に逃げた時に、愛人に連れられてギャンブルを始めたの。最初は数百万勝ったけど、その後は数千万単位で負けていったわ」