第141章 人に知られたくないなら自分がやらないこと

夏目星澄は手の中の銀行カードを見つめ、また困惑した。

なぜなら、彼女は霧島雪栄の家がどこにあるのか全く知らなかったからだ。

返したくても返す場所がない。

霧島冬真のところに持って行って、カードを渡してもらおうかと迷っているときだった。

携帯電話が鳴った。

見ると霧島お婆様の電話番号だった。

夏目星澄はすぐに電話に出た。「もしもし、お婆様...」

しかし言葉を発した途端に後悔した。

結局、彼女は霧島冬真と離婚したのだから、もうお婆様と呼ぶ資格はないはずだ。

そこで急いで言い直した。「申し訳ありません、霧島お婆様。」

登坂萌乃は夏目星澄が自分をお婆様と呼んでくれて嬉しかったが、突然言い方を変えられて少し寂しく感じた。「星澄、お婆様なんて呼ばないで、お婆様って呼んでくれたら私は嬉しいわ。」