夏目星澄は手の中の銀行カードを見つめ、また困惑した。
なぜなら、彼女は霧島雪栄の家がどこにあるのか全く知らなかったからだ。
返したくても返す場所がない。
霧島冬真のところに持って行って、カードを渡してもらおうかと迷っているときだった。
携帯電話が鳴った。
見ると霧島お婆様の電話番号だった。
夏目星澄はすぐに電話に出た。「もしもし、お婆様...」
しかし言葉を発した途端に後悔した。
結局、彼女は霧島冬真と離婚したのだから、もうお婆様と呼ぶ資格はないはずだ。
そこで急いで言い直した。「申し訳ありません、霧島お婆様。」
登坂萌乃は夏目星澄が自分をお婆様と呼んでくれて嬉しかったが、突然言い方を変えられて少し寂しく感じた。「星澄、お婆様なんて呼ばないで、お婆様って呼んでくれたら私は嬉しいわ。」