病院。
医師の診察の結果、「奥様は大丈夫です。ただショックで気を失っただけで、お腹の赤ちゃんも健康です。あと数日安静にすれば問題ありません」という診断が下された。
霧島冬真は医師の言葉を聞いて、少し安心した。
しかしその夜、彼女は高熱を出し、うわごとを言い始めた。
妊婦なので、解熱剤は使えない。
物理的な方法で熱を下げるしかない。
霧島冬真は他人に夏目星澄の体に触れさせたくなかったので、自分で看病することにした。
しかし、彼は人の世話をしたことがなく、力加減がわからなかった。
夏目星澄は眉をひそめ、痛みで小さく呟いた。
霧島冬真は苦笑して、「夏目星澄、お前のことを大切にするのは、なぜこんなに難しいんだ」と言った。
彼の一晩中の懸命な努力の結果。
夏目星澄の熱は下がった。
そして意識も戻った。
目を開けると、霧島冬真がベッドの横で伏せているのが見えた。
目の下にクマができていた。
一晩中眠っていないようだった。
夏目星澄は、こんなに静かな霧島冬真を見るのは久しぶりだと感じた。
彼の顔は、まるで神様が直接彫刻したかのように端正で美しかった。
どんな女性も見とれてしまうような顔立ちだった。
彼女も例外ではなかった。
ただ残念なことに、この男性はもう自分のものではない....
霧島冬真は誰かに見られているのを感じたかのように、ゆっくりと目を開け、夏目星澄と目が合った。
夏目星澄は顔に戸惑いと恥ずかしさを浮かべ、すぐに視線を逸らした。
元々青白かった小さな顔が、知らぬ間に不自然な紅潮を帯び、カールした睫毛も震えていた。
何かを必死に隠そうとしているようでいて、でも自分をコントロールできないようだった。
霧島冬真は何も言わず、手を伸ばして彼女の額に触れた。「うん、熱は下がったな」
夏目星澄はようやく自分が熱を出していたことに気付いた。「私、熱があったの?」
昨夜体が熱くて苦しかったのは、そのせいだったのか。
霧島冬真は淡々と説明した。「ああ、医者が言うにはショックで熱が出たらしい。妊娠中だから薬は使えなかった。だからアルコールで体を拭いて熱を下げた」
夏目星澄は突然目を見開いた。体を拭いて熱を下げたということは。
全部見られてしまったということか。