第154章 若奥様が消えた

林田瑶子は夏目星澄が霧島冬真に子供の親権を争われることを心配していることを知っていた。

彼女はやむを得ずここから逃げ出そうとしていた。

親友として、このようにすれば夏目星澄が後々苦労することを知りながらも、彼女は支持することを決めた。

「星澄、安心して。私が必ず助けるから」

霧島冬真の方では、大谷希真からの報告を受けた電話だった。

事の経緯も全て把握した。

夏目星澄の両親は、息子が巨額の借金を作り、家を売って返済したくなかったため。

夏目星澄に目をつけ、結納金で借金を返済しようとした。

そして西原健士も善人ではなかった。

表向きは二人の妻を不幸にしたと言われていたが、実際は彼の異常な行為で虐待死させていたのだ。

そのため、もう誰も彼と結婚しようとする女性はいなかった。

だから夏目星澄の両親が彼女を差し出してきた時、彼は急いで関係を持とうとした。

後になって、あんなに衝動的になった百の理由の一つは、岡田麗奈が彼に飲ませたお茶に薬を入れていたからだと分かった。

そして彼ら三人は誰も法の裁きを逃れることはできず、拘留されることとなった。

もちろん霧島冬真は、単に拘留されるだけでは済まさないつもりだった。

彼の女に手を出した以上、代償を払わねばならない!

霧島冬真が戻ってみると、夏目星澄は林田瑶子と一緒にいて、随分落ち着いていた。

会社にはまだ多くの処理すべき事があった。

そこで明日改めて復縁について話し合おうと考えた。

同時に、二人のボディーガードを交代で入口に配置した。

夏目星澄は林田瑶子としばらく話をして、霧島冬真が戻ってこないことに気付いた。

帰ったと思い、この機会に早く逃げ出そうとした。

しかし病室のドアを開けると、入口に二人の大柄な黒服の男が立っているのを発見した。

彼らは夏目星澄の安全を守るために霧島冬真が残したと言った。

しかし夏目星澄には、彼らは自分を監視するために残されたように感じられた。

なぜなら林田瑶子は自由に出入りできるのに、自分はそうではなかったから。

どこへ行くにも二人のボディーガードが左右についてきた。

つまり、病院から出ることは不可能だった。

夜になった。

大谷希真は前日同様、妊婦用の食事を届けてきた。

もちろん林田瑶子の分も含まれていた。