第187章 夜に私に会えないと眠れないの?

レストランを出て、夏目星澄と林田瑶子は三浦和靖を見送った。

その後、林田瑶子はバッグから車のキーを取り出し、「星澄、もう遅いから、送っていくわ」と言った。

夏目星澄は突然、霧島冬真が手配した運転手が近くで待っていることを思い出し、「いいわ、私たち道が違うから。先に帰って」と言った。

ちょうどそのとき、林田瑶子の携帯が鳴った。スタジオから緊急の用事があるとの連絡だった。「わかったわ、じゃあ先に帰るね。家に着いたら電話してね」

林田瑶子が去ってしばらくすると、霧島冬真の運転手が車を彼女の前に停め、運転席から降りてドアを開けながら、恭しく「若奥様、どうぞ」と言った。

夏目星澄は近づきながら、考えて言った。「もう若奥様って呼ばないでください。私と霧島冬真はもう離婚したんだから、関係ないんです」

運転手は困ったような表情で言った。「でも、若奥様とお呼びしないと、若旦那様に申し訳が立ちません」

夏目星澄は無言で溜息をつき、「いいです、何も言わなかったことにして。行きましょう」

結局のところ、これは彼女と霧島冬真の間の問題で、彼らの下で働く人々には関係ないことだった。

些細な呼び方にこだわる必要もなかった。

夏目星澄は帰宅後、自室に籠もって台本を読み始めた。

三浦和靖にこのドラマのテーマソングを書くと約束していたのだ。

より良い感情のこもった曲を作るには、台本の内容をよく理解する必要があった。

台本に夢中になり、時間を忘れてしまった。

中村さんが食事を促しに来たが、断った。「中村さん、お腹すいてないから、気にしないで」

本当にお腹が空いていなかった。引っ越してくる前にたくさんのお菓子を持ってきていた。

さっきまで台本を読みながら食べていて、ほとんど食べ終わっていた。

中村さんも夏目星澄に無理強いはできず、諦めるしかなかった。

夜、霧島冬真が仕事から帰ってきたのは十時過ぎだった。

中村さんが家政婦室から出てきて、「若旦那様、何か食べ物をお作りしましょうか?」

霧島冬真はネクタイを緩めながら、淡々とした声で言った。「夏目星澄に何が食べたいか聞いてきて。また夜中に食べ物を探しに来ないように」

中村さんは少し躊躇してから言った。「若旦那様、若奥様は夕食を召し上がっていません。お腹が空いていないとおっしゃっていました」