三浦和靖は芸能界で長年過ごしてきた経験から、霧島冬真が表面上は怒っていないように見えても、何かを敏感に察知し、すぐに霧島冬真の助手が持ってきた夜食を受け取るよう指示した。
大谷希真が次々とケータリングカートを運ばせると、全員が思わず驚嘆の声を上げた。
なんとビュッフェで、しかも御福亭のシェフが直接調理するバーベキューだった。
五つ星ホテルのシェフなのだ!
青木尚之が夏目星澄と衣装を着替え終わって戻ってきたとき、この光景を目にして呆然とした!
「霧島社長は本当に気前がいいわね。しかも超イケメンだし。結婚してるのかしら。こんな男性と結婚できる人は幸せ者よね!」
夏目星澄は唇を噛んだ。青木尚之に、自分は結婚していたけど幸せではなく、しかも離婚したと言いたかった。
青木尚之は夏目星澄の様子の変化に気付かず、独り言のように言った。「夏目先生、一晩中忙しくて何も食べてないでしょう。何か持ってきましょうか。」
夏目星澄は首を振った。「お腹は空いてないわ。気にしないで。あなたは食べに行って。私は少し休んだら帰るから。」
青木尚之はそれ以上は強要せず、「わかりました。じゃあ先に行きますね。」
坂口嘉元もこの時衣装を着替え終わり、近づいてきて心配そうに夏目星澄を見た。「星澄、あの水冷たかったけど、大丈夫?」
「大丈夫よ、問題ないわ。あなたも食事に行って。」
「僕は減量期間中だから、夜は食べないんだ。少し一緒に座っていて、それから家まで送るよ。」
夏目星澄が断ろうとした瞬間、長身の影が彼女に近づいてきた。
霧島冬真は二人の間に立ち、淡々とした、しかし拒否を許さない口調で言った。「坂口さんにご心配をおかけする必要はありません。後で私が彼女と一緒に帰ります。」
坂口嘉元の表情が一変した。「一緒に帰る?二人は付き合ってるの?」
前回会ったとき、夏目星澄は彼のことを友達だと言っていたのを覚えていた。
夏目星澄は彼にどう説明すればいいのか分からなかった。
霧島冬真は冷たく言った。「これは私たち二人の私事です。坂口さんに説明する必要はないでしょう。」
坂口嘉元は二人が認めたものと受け取り、少し茫然として「申し訳ありません。失礼しました。お邪魔しないようにします。」