第218章 他人事とは無責任なもの

花井風真は即座に早川晴乃の暴走を止めた。「何を馬鹿なことを言っているんだ。そんなことを言えば星澄にどれだけ迷惑がかかるか分かっているのか!」

彼は言い終わると心配そうに夏目星澄を見た。「星澄、申し訳ない。晴乃は頭が混乱しているんだ。今すぐ連れて行く」

早川晴乃は執拗に叫び続けた。「行かない、行かないわ!さっきの部屋には私と夏目星澄しかいなかったのよ。私のダイヤモンドのブレスレットが無くなったの。彼女が盗んだんじゃなかったら誰よ!」

花井風真は苛立たしげな表情を浮かべた。「何のダイヤモンドのブレスレットだ。今日お前がそんなもの付けているのを見てないぞ。盗まれるはずがない」

早川晴乃は焦りながら説明した。「あれは千瑠が今日くれた婚約祝いのプレゼントよ。あなたは遅く来たから見てないだけ。でも私ずっと手首につけてたの。さっきまでは。本当のことよ、千瑠に聞いてみて」

突然、優美な声が聞こえてきた。「晴乃?あなた?」

梁川千瑠はちょうどここを通りかかったふりをして、その場にいる人々を見て不思議そうに尋ねた。「みなさんどうしてここに?何かあったの?」

早川晴乃は梁川千瑠を見るなり、援軍を得たかのように急いで言った。「千瑠、ちょうどよかった。あなたがくれたダイヤモンドのブレスレットが見当たらないの。夏目星澄が盗んだんじゃないかと思うの」

梁川千瑠は驚いたような声を上げた。「えっ、星澄がそのブレスレットを?そんなはずないわ」

「きっと何か誤解があるのよ。どこかに落としてしまったんじゃない?私が探してあげる」

そう言いながら、部屋の中を探し始めた。

ソファーを探ったり、化粧台を探ったりして、最後に夏目星澄のバッグに手を伸ばした。

夏目星澄は梁川千瑠の一挙手一投足を見つめていた。彼女がこんなに親切に自分の潔白を証明しようとするはずがないと確信していた。

「梁川さん、そのバッグは私の私物です。触らないでください」

梁川千瑠の手が一瞬止まった。「星澄、興奮しないで。私はただ晴乃に誤解されないようにしたいだけよ」

早川晴乃は事情も分からずに言い放った。「もういいわ千瑠、そんなに気を遣う必要なんてないわ。離婚して、身分も後ろ盾もなくて、歌って生活してるだけの女が、私のあんな高価なダイヤモンドのブレスレットを見て、嫉妬して盗んだに決まってるわ!」