第232章 私はあなたの考えを尊重します

夏目星澄は霧島冬真の意見を知りたかった。

もしこれが彼の考えで、ただ霧島お爺様に言わせただけなら、彼女も何も言うことはない。

そもそも梁川千瑠を刑務所に入れると言い出したのは彼なのだから。

もし彼が考えを変えたいなら、彼女が反対しても止めることはできない。

ところが霧島お爺様は突然冷ややかに鼻を鳴らし、「あの愚か者め、人情が分からん。どう言っても同意しないから、お前に頼むしかないんだ」

夏目星澄の心が突然震えた。霧島冬真がお爺様の言葉さえ聞き入れないとは思わなかった。

「私...」彼女が何か言おうとした時。

電話の向こうから急ブレーキの音が聞こえた。

そしてすぐに異音が続いた。

夏目星澄は何か起きたのではないかと心配になった。「もしもし、霧島お爺様、聞こえますか?」

「冬真、何をする!携帯を返せ!」

「お爺様、星澄を道徳的に追い詰めないでください」

「何を馬鹿なことを。私は彼女と相談しているだけだ。何を焦っているんだ!」

「相談することなどありません!」

そして電話は切れた。

夏目星澄は画面が暗くなったのを見て、さっきは霧島冬真がお爺様から携帯を奪ったのだと気づいた。彼女を困らせたくなかったのだ。

突然、心の中が温かくなった。

霧島冬真は本当に変わったようだ。

彼は彼女の気持ちを大切にしているようだった。

その時、車の中では老若二人がまだ言い争っていた。

「冬真、お前は度が過ぎている。私の携帯まで奪うなんて、何をするつもりだ?」

「お爺様こそ何をするつもりですか。梁川家の件は星澄とは何の関係もないのに、なぜ彼女を困らせるんですか?」

霧島盛一は怒りで顔が青ざめた。「彼女の一言で済む話だ。どれほど困ることがある?梁川お爺様があんな状態になっているのを見ただろう。あの方を成仏できないようにするつもりか。忘れるな、我が霧島家は梁川家に一つの命の借りがあるのだぞ!」

霧島冬真の目に痛みの色が浮かんだ。「それは私が梁川家に借りがあるのであって、星澄とは関係ありません。返すなら私が返します」

「だから私が弁護士と警察署と話をつけて、梁川千瑠にお爺様の最期を看取らせ、その後で法の裁きを受けさせます」

霧島盛一は霧島冬真が理解できなくなっていた。「お前がそれほど星澄の気持ちを大切にするなら、なぜあの時千瑠のために離婚したんだ?」