おそらく時間が経ちすぎたせいか、霧島冬真もあまり記憶がなかった。
しかし最近起きたことは、鮮明に覚えていた。
夏目星澄は細部にこだわる人だ。油断は禁物だった。
最初からすべて数え直すことにした。
最初は夏目星澄の誕生日で、たくさんの料理を用意したのに、彼は食べずに空港へ梁川千瑠を迎えに行った。
その時、彼女の表情は良くなかったが、彼は気にも留めなかった。彼女が不機嫌になったのは当然だった。
後で誕生日プレゼントを贈っても、彼女は受け取らなかった。
考えてみれば当然だ。誕生日に、自分の夫が他の女性の世話をするのを見たい人なんているだろうか。
あの時、自分は一体何を考えていたのだろう!
その後、霧島雪栄が何度も夏目星澄に挑発的な態度を取っても、彼は何もしなかった。
霧島冬真は息を詰めた。
薬を使った事件で、夏目星澄が霧島雪栄の計画を台無しにしたから、彼女が標的にされたのだろう。
しかし彼は真剣に受け止めず、叔母は口が悪いだけで、夏目星澄に本当の害は与えないだろうと思っていた。
きっと夏目星澄は多くの辛い思いをしたはずなのに、彼女は一度も口にしなかった。
霧島冬真は目を閉じた。本当に間違いを重ねてきたものだ。
自分の甥すら計算に入れる人間が、甥の妻を大切にするはずがない。
そしてエンペラーカジノでの杯を交わす出来事があり...
夏目星澄は遂に爆発し、離婚を決意した。
数え上げてみると、霧島冬真は自分がどれほど愚かだったか気付いた。
この瞬間、自分の記憶力の恐ろしさを感じた。
起きた出来事が映画のシーンのようにゆっくりと再生され、夏目星澄の言葉も一字一句はっきりと覚えていた。
霧島冬真は頭を下げて書き続けた。手が痛くなるまで書き、気がつくと既に3、4ページも埋めていた。
冷たい白い光の下、広げられた白い紙に書かれた黒い文字は、まるで無数の矢のように男の目を刺した。
夏目星澄の好みを書こうとすると、大きな空白が残った。
彼女を傷つけたことを書くと、罪状が次々と並んだ。
最も恐ろしいのは、書いた量ではなく、まだ書いていない量だった......
霧島冬真は考えれば考えるほど、心が冷たくなっていった。
しばらくして、ようやく感情を整理することができた。
新しいページを開き、計画を立て始めた。