第244章 婚約解消

「命?」

夏目星澄は、こんなに重い恩があるとは思いもよらなかった。

林田瑶子はゆっくりと思い出しながら話し始めた。「この件は、私たち親しい家族だけが知っていることで、もう何年も前の出来事なの」

「霧島冬真が5歳の時に誘拐されたことがあって、犯人は家の運転手だったわ。その後、助け出されたけど、梁川千瑠の兄の梁川永成が亡くなったの。霧島冬真を救うためだったって」

「それ以来、霧島家は梁川家を特別に面倒見るようになったわ。特にビジネスの面で。梁川家はもう没落寸前だったのに、今でも倒れずにいられるのは、霧島家のおかげよ」

林田瑶子は話し終えると、ため息をついた。「私は霧島冬真が梁川千瑠のことを好きだから、特別扱いしているのかと思っていたけど、まさか兄の恩を返すためだったなんて……」