夜。
林田瑶子が仕事から帰ってくると、夏目星澄がソファに座って呆然としており、少し落ち込んでいるように見えたので、心配になった。「星澄、どうしたの?」
夏目星澄は我に返り、淡く微笑んで、「何でもないわ。どうして早く帰ってきたの?」
「早く帰って星澄と一緒にいたかったからよ。ほら、美味しいものを買ってきたわ!」
林田瑶子は嬉しそうに手提げの果物袋を掲げた。
夏目星澄は一瞬で懐かしい香りを嗅ぎ取った。「ドリアンだわ!」
「そう、わざわざ輸入フルーツ店で買ってきたの。さくらんぼもあるわ、とっても甘いのよ」
林田瑶子と夏目星澄は長年の付き合いで、趣味も好みもよく似ていた。
今、彼女が妊娠していて生ものが食べられなければ、寿司を食べに連れて行っていたところだった。
林田瑶子はドリアンと洗ったさくらんぼを皿に盛り、夏目星澄の前に持ってきた。
夏目星澄は久しぶりのドリアンで、一切れ口に入れると、香り高く柔らかで、本当に美味しかった。
彼女の気分も少し晴れたようだった。
二人が食べながら話をしていると、突然インターホンが鳴った。
林田瑶子は不思議に思った。この時間に誰が来るのだろう。
東條煌真は今夜は残業で遅くなると言っていた。
まさかまたあの変な両親じゃないでしょうね。
林田瑶子は不機嫌そうにドアスコープを覗いた。
思いもよらず、ドアの外に立っていたのは霧島冬真だった。
林田瑶子は眉をひそめた。「まさか、どうして彼が来たの?」
夏目星澄は振り返って見た。「瑶子、誰?」
「霧島冬真よ。星澄、先に部屋に入って。私が追い返すわ」
夏目星澄もこの時は確かに霧島冬真に会いたくなかったので、自分の部屋に隠れた。
人が部屋に入ったのを確認してから、林田瑶子はドアを開けた。
霧島冬真は開けたのが林田瑶子だと分かると、すぐに本題に入った。「星澄に会いに来た」
林田瑶子はドア口に立ちはだかった。「彼女はあなたに会いたくないわ」
霧島冬真の目が暗くなった。「話があるんだ」
しかし林田瑶子は冷笑した。「もう話すことなんてないでしょう。霧島社長、お金もあって容姿も良くて、どんな女性でも手に入れられるはずなのに、どうして私の星澄を苦しめるの」