夏目星澄は花井風真の気分が悪いのだろうと思い、誰かに慰めてもらいたがっているのだと考えた。
幼い頃からの友人なのだから、恋人にはなれなくても、友達としてはやっていけるはずだ。
少し躊躇した後、承諾した。「いいわ」
「じゃあ、明日の午後、迎えに行くよ」
「そんなに面倒なことしなくていいわ。時間と場所を決めて、私に教えてくれればいいから」
「そうか、じゃあ後でLINEで送るよ」
花井風真は喜んで電話を切った。
一方、早川晴乃は花井風真との婚約を解消させられ、泣きながら実家に帰って母親に助けを求めるしかなかった。
「お母さん、何とかして!花井君が私を捨てたの!」
霧島雪栄も花井風真がこの件について気付き、証拠まで見つけたとは思わなかった。
早川晴乃のために取り戻そうとしても、どうすればいいのか分からなかった。
「あなたをどう叱ればいいのかしら。そんな大事な時に、他の男と関係を持つなんて。しかも写真まで撮られて。本当に馬鹿よ!」
霧島雪栄は憤慨して早川晴乃を何度も睨みつけた。
せっかく市長の息子を婿にできると自慢できると思っていたのに。
まさかこんな形で最後の「おいしい話」が逃げていくとは。
早川晴乃も悔しかった。「私にどうしろっていうの?花井君はその時ぐっすり寝ていて、全然反応がなかったのよ。私の体に痕跡を残さなければ、本当に私と寝たって信じてくれるわけないでしょ!」
ただ、彼女が雇ったモデルが、彼女が寝ている間にあんなにたくさんの写真を撮っていたとは思いもよらなかった。
そうでなければ、花井風真は彼女に対して何もできなかったはずだ。
「今さらそんなこと言っても仕方ないでしょう。花井君があなたと婚約を解消したら、お父さんはきっと私が娘をちゃんと育てなかったって責めるわ。そうなったら離婚になるかもしれないわ。今すぐおじいちゃんとおばあちゃんに助けを求めるわ!」
霧島雪栄はすぐに登坂萌乃に電話をかけた。
登坂萌乃はすでに寝ていたところを突然の電話で起こされ、少し不機嫌だった。「何よ、こんな遅くに電話してきて」
霧島雪栄はすぐに泣きながら訴えた。「お母さん、私と晴乃を助けて!花井君が婚約を解消したの」
登坂萌乃は一瞬にして眠気が吹き飛んだ。「婚約解消?どうしてそんなことになったの?」