霧島冬真は徐々に味をしめ、止められなくなっていった。
まるで夏目星澄を丸呑みにしようとするかのように、さらに強く抱きしめた。
夏目星澄は息苦しくなり、本能的にもがき始めた。
しかし明らかに、彼女を抱きしめている男は手放す気がなかった。
夏目星澄は仕方なく男の腰を強く掴んだ。
霧島冬真はようやく不本意ながら彼女を放した。
彼は満足げに唇を舐め、夏目星澄の頬を紅潮させた様子を見て、完熟の桃のように甘く魅惑的だと感じた。
霧島冬真は輝く瞳で、目の前の昼夜問わず想い続けた女性を見つめながら言った。「星澄、僕を許してくれたんだね?」
そうでなければ、キスした時に拒否しなかったはずがない。
夏目星澄は今、怒りと恨めしさで一杯だった。「霧島冬真、あなたって最低!夢のふりをして私を騙すなんて!」
霧島冬真は冤罪だと感じた。「演技なんかしてないよ。本当に夢の中で君に会えたと思ったんだ。君に会いたくて仕方なかったから、キスしてしまった。本当だよ!」
彼は確かに嘘をついていなかった。おそらく薬の効果がまだ完全に消えていなかったため、意識がはっきりしておらず、夏目星澄を見た時に本当に夢を見ていると思い込んでいた。
夏目星澄の唇に触れた時、その実感で夢ではないと気づいた。
しかし、やっと会えた人を手放したくなかった。
間違いを認めることにした。
夏目星澄は横目で彼を見て、顔中に不信感を表していた。
霧島冬真はやっと会えた人を怒らせて帰らせたくなかったので、すぐに謝罪した。「ごめん、僕が悪かった。怒らないで。今、君は子供を宿しているんだから、怒ってはいけない。それとも僕を殴る?怒りが収まるまで殴っていいよ。」
夏目星澄には彼を殴る気など毛頭なく、ただ彼がまだ熱を出しているという理由で、それ以上追及しないだけだった。
「私は人を殴りに来たわけじゃないわ。大谷希真から電話があって、あなたが梁川千瑠に薬を盛られて、病院で胃洗浄を受けて、熱も出ているって。見に来てほしいって頼まれたの。本当は来るつもりはなかったけど、彼があなたを心配していたから来てみただけ。誤解しないでね。」
霧島冬真の喜びに満ちていた表情が一瞬にして曇った。「まだ僕を許してくれないの?」