第261章 全てを失う

霧島冬真も霧島峰志と長話をせず、直接大谷希真を呼び入れた。

「霧島会長に調査結果を報告してください」

大谷希真は頷き、真剣で厳粛な表情で言った。「私は既に調べ上げました。問題のお酒は、梁川千瑠の母親である田中文乃がウェイターに金を渡して霧島社長に渡したものです」

「霧島社長の休憩室のカードキーも、田中文乃がフロントの隙を見て盗んだものです。梁川千瑠が手術で入院したのも霧島社長の一蹴りが原因ではなく、妊娠して流産したためです」

「全ての証拠は既に警察に提出しました。彼らはすぐに逮捕に向かうはずです」

霧島峰志は、梁川千瑠と彼女の母親がこれほど卑劣な行為をするとは夢にも思わなかった。

薬を使って霧島冬真を陥れようとするなんて。

もはや梁川家は昔の梁川家ではないようだ。

梁川お爺様が亡くなってから、彼らは邪道に走り始めた。

霧島峰志は今や梁川家にますます失望していた。

「分かった。よく休んでくれ。私は先に行く」

しかし彼が出て行くや否や、梁川英夫から電話がかかってきた。「霧島峰志、息子は見つかったのか。何と言っていた?いつうちに謝罪に来るんだ?」

霧島峰志は冷笑して言った。「謝罪?考えが甘いな。この一件は全て君の妻と娘が仕組んだ芝居だ。むしろ梁川家に謝罪を求めないだけでも上等だ。自分たちのことは自分たちで考えろ」

彼の目には、梁川千瑠はずっと純真で優しい女の子に映っていた。

たとえ以前海外に逃げたときも、何か事情があるのだろうと思っていた。

しかし今となっては、彼女は計算高いだけでなく、自分を大切にしない人間だということが分かった。

どこかで作った私生児を息子になすりつけ、霧島家の血統を乱そうとするなんて、とんでもない妄想だ!

電話の向こうで梁川英夫は怒り狂いそうになっていた。やっと霧島家を追い詰められる理由ができたと思ったのに、結局相手に説教されるはめになった。

梁川千瑠はこの時、霧島峰志が良い知らせを持ってくるのを期待して待っていた。「お父さん、霧島おじさんは何て?冬真さんは私に会いに来てくれるの?」

梁川英夫は梁川千瑠を怒りの目で見つめた。「来るもんか。向こうは全てお前とお前の母親の自作自演だと言っている。よく考えろと言われたぞ。本当に霧島冬真がお前を襲おうとしたのか?」