第262章 とっくに心が柔らかくなっていた

夏目星澄はエレベーターに乗っているとき、突然二回くしゃみをした。

霧島冬真は直ちに心配そうに彼女を見つめ、「どうしたの?風邪?」と尋ねた。

夏目星澄は首を振って、「ううん、ただ急に鼻が少し不快になっただけ」と答えた。

しかし、彼女の心の中には不安があった。

何となく、誰かに陰で悪口を言われているような気がした。

でも最近は外出も控えめで、人とも会わないし、誰かと敵対するようなこともないはずだった。

霧島冬真は自分のコートを夏目星澄の肩にかけながら、「今は外が寒いから、暖かくしておいた方がいいよ」と言った。

夏目星澄はコートを少し引き寄せながら、「ありがとう」と言った。

思えば、前回病院で彼が熱心に告白してから、まるで別人のように変わっていた。

毎日アパートに来ては、特に何をするでもなく、ただ彼女と話をしたり、美味しい物を持ってきたりしていた。