霧島冬真は廊下の隅で丸二時間も隠れていた。
夏目星澄が追いかけてきて、彼女から離れるように迫られることを恐れていた。
しかし実際には、彼女の体調ではベッドから起き上がることもできない状態だった。
霧島冬真は今、ただ僥倖を期待しているだけだった。
彼は気持ちを整え、何事もなかったかのように、病室に戻った。
そして、テーブルの上の果物を手に取り、丁寧に皮をむいて切り分け、きれいな器に入れて夏目星澄に渡した。
以前はこれらすべて夏目星澄が彼のためにしていたことだった。
彼がどんなに遅くまで仕事をしていても、彼女はいつもコーヒーと果物を用意して、彼の好きなように食べさせていた。
今は彼がただそれを真似ているだけだった。
「果物を食べて、母さんが特別に買ってきてくれたんだ。」