霧島冬真は廊下の隅で丸二時間も隠れていた。
夏目星澄が追いかけてきて、彼女から離れるように迫られることを恐れていた。
しかし実際には、彼女の体調ではベッドから起き上がることもできない状態だった。
霧島冬真は今、ただ僥倖を期待しているだけだった。
彼は気持ちを整え、何事もなかったかのように、病室に戻った。
そして、テーブルの上の果物を手に取り、丁寧に皮をむいて切り分け、きれいな器に入れて夏目星澄に渡した。
以前はこれらすべて夏目星澄が彼のためにしていたことだった。
彼がどんなに遅くまで仕事をしていても、彼女はいつもコーヒーと果物を用意して、彼の好きなように食べさせていた。
今は彼がただそれを真似ているだけだった。
「果物を食べて、母さんが特別に買ってきてくれたんだ。」
夏目星澄は本当に呆れていた。霧島冬真は何事もなかったかのように振る舞えるが、彼女にはそれができなかった。
「霧島冬真...」
「君が何を言いたいのかわかっているけど、今はその話をしないでおこう。今の君の仕事は療養に専念することだ。体調が回復してから、私たち...私たちでまた話し合おう。」
実際、夏目星澄がいつ話を切り出しても、彼の答えは一つだけだった。それは同意しないということだ。
その後の数日間も、霧島冬真はそのように振る舞い続けた。
夏目星澄がその件について話を持ち出すたびに、彼は聞こえないふりをするか、話題を変えてしまった。
夏目星澄は何度か言及したが、もう言うのも面倒になった。
寝たふりをしている人を起こすことはできないからだ。
どうせ今は病院にいて、逃げ出すこともできない。だから体調が良くなってから、最後にもう一度彼と話し合おうと思った。
それでも話がまとまらなければ、もう話し合うのはやめにしよう。
彼を避けて暮らすだけだ。
一週間後、夏目星澄の体調はようやく退院できるまでに回復した。
ただし、まだしばらく自宅で静養する必要があり、外出できるようになるまでには時間がかかる。
夏目星澄は林田瑶子と約束して、退院の迎えに来てもらうことにしていた。
しかし林田瑶子が車に乗ったところで、会社から緊急の用件があると連絡が入り、すぐに戻る必要があった。