警察署内。
伊東光也と夏目星澄が報告を終えると、大谷東也の正式な取り調べが始まった。
「大谷東也、今や証拠は明白だ。もう言い逃れはやめなさい。誘拐殺人は死刑に値する罪だ。自分のためでなくても、息子のためにも、梁川千瑠の罪を被るべきではない」
大谷東也は急に感情的になった。「言うべきことは全て話しました。なぜ私の息子を引き合いに出すんです?彼は白血病で、ショックに耐えられないんです!」
伊東光也は溜め息をつきながら言った。「でも考えてみてください。息子の治療費は不正な手段で得たものです。もし息子さんがいつかそれを知ったら、そんなお金で治療を受けたいと思うでしょうか?」
大谷東也は自分の髪をつかみ、目を見開いて言った。「そんな日は来ません。罪は私が犯したんです。どんな罰でも受けます。死んでもいい、死んでも構いません。ただ息子には手を出さないでください!」
「あなたは息子のために命さえ惜しまない。でも夏目星澄の子供はどうなんです?まだこの世界を見たことのない赤ちゃんです。かわいそうと思わないんですか?」
大谷東也は一瞬固まり、何か言い返そうとしたが、何も言えなかった。
彼の子供がかわいそうなら、夏目星澄の子供も同じように罪のない存在なのだ……
大谷東也の表情が苦しげになった。人を害するつもりはなかった。ただ行き詰まって、どうしようもなかっただけだ。
そして一歩一歩と間違った道を進み、もう引き返せなくなってしまった。
ただ、警察がこんなに早く息子のことを突き止めるとは思わなかった。
大谷東也は頭を下げた。「とにかく話すべきことは全て話しました。息子を傷つけず、治療を続けさせてくれるなら、どんな罪でも認めます」
霧島冬真が取調室に入ってきて、冷たい声で問いただした。「どんな罪でも認める?では二十五年前の私を誘拐した事件も認めるのか?」
大谷東也は体が強張り、恐怖に満ちた目で霧島冬真を見た。
なぜ二十五年前のことが自分に関係していると知っているのだろう!
霧島冬真は大谷東也のその反応を見て、自分の推測が間違っていないことを確信した。
しかし大谷東也は素早く視線を逸らし、何も知らないふりをして言った。「霧島社長、何のことですか?私にはわかりません」