梁川千瑠はついに警察に48時間拘束された後、自由を取り戻した。
彼女は嬉しさのあまり泣きそうになった。
梁川英夫は彼女を見るなり、急いで家に連れて帰ろうとした。
警察が考えを変えて、また逮捕するのではないかと心配だった。
梁川千瑠は車に押し込まれるなり、不満そうに言った。「お父さん、何を急いでるの?私は中で二日間も閉じ込められて、ろくに食べも寝もできなかったのよ。体中かゆいし、早く美味しいものを食べて、エステでゆっくりSPAを受けたいわ。」
梁川英夫は彼女を鋭く睨みつけた。「随分と余裕があるようだな。今がどんな時だと思ってる?美容なんかしている場合じゃない!早く家に帰って荷物をまとめるんだ。今日中におばあちゃんの所へ飛行機で行くぞ。」
梁川千瑠は上の空で言った。「警察も私を釈放したのに、何を心配してるの?それに、お兄ちゃんが死んでからおばあちゃんには会ってないわ。もう顔も覚えてないくらい。それに私のことを昔から嫌ってたじゃない。行ったところで顔色伺って生活するなんて耐えられないわ。」
梁川英夫は深刻な表情で梁川千瑠の額を指で突いた。「バカな娘だ。おばあちゃんがどんなに怖くても血の繋がった祖母だ。それに皇室の力もある。必ず守ってくれる。でなければ、霧島冬真が証拠を見つけて、お前が夏目星澄を誘拐して彼の子供を失わせたことが確定したら、その時は逃げられなくなるぞ!」
梁川千瑠は即座に自分の額を押さえた。「お父さん、手加減してよ。痛いじゃない。それに警察に証拠があったら、とっくに出してるはずよ。私を釈放するわけないでしょ。」
梁川英夫は眉をひそめた。「大谷東也がまだ中にいることを忘れたのか?もし彼がお前を裏切ったら、お前の人生はおしまいだぞ!」
梁川千瑠は手を振った。「そんなことないわ。彼の故郷の瀕死の息子は、私の毎月の援助が必要なの。私を裏切る勇気なんてないわ。お父さん、百パーセント安心して。私は大丈夫よ。」
梁川英夫は霧島冬真がそう簡単に騙されるような男ではないと確信していた。
きっと裏で調査を進めているはずだ。
だから今は手をこまねいているわけにはいかない。梁川千瑠を国外に送り出すのが最も安全な方法だ。
そこで翌朝早くからネットで梁川千瑠の航空券を購入しようとした。