林田瑶子は東條煌真の態度にまずまず満足していた。彼を褒めようとした矢先、神田琴江の方から寺が爆発したかのような叫び声が聞こえてきた。「結納金が100万円?息子、あなた狂ったの?あの女にそんな大金を払う価値なんてないわ!」
100万円は神田琴江のような一般家庭出身の人にとっては天文学的な数字だった。
しかも、この金を東條煌真が投資に使うなり、家や車を買うなりするのならまだしも、嫁を迎えるために使うなんてとんでもない。
神田琴江は慌てて東條煌真の袖を引っ張った。「そんなにお金があるなら、他のことに使えばいいじゃない。なぜ彼女に結納金として渡さなきゃいけないの?それに、あなたが言ってた家だって安くないでしょう。本当に私を殺す気?だめよ、絶対反対!そんな大金を他人に渡すなんて!」
東條煌真は神田琴江の手を振り払い、重々しい口調で言った。「母さん、もういい加減にして。瑶子は僕の愛する人だって言ってるでしょう。どうして他人なんですか。それに、この程度のお金は瑶子にとって大したことないけど、それでも僕は最高のものを彼女に捧げたいんです。僕の意思なんだから、口を出さないでください。」
「煌真、あなたは私が育てた子よ。口を出すのは当然でしょう。まずはお金を私に預けなさい。結婚するまで私が管理して、その時になったら返すから。」神田琴江は、言うことを全く聞かない嫁に、そんな大金を渡す気にはなれなかった。
東條煌真は突然苦笑いを浮かべた。「母さん、同じ手口で大学入学前にも一度騙されたよね。また同じことをしようとしているの?もう騙されないよ。」
彼は幼い頃から賢く、勉強も熱心で、学校の成績は常にトップクラスで、奨学金も多くもらっていた。
そのおかげで家計の負担も減り、両親も彼を大学に行かせることを承諾した。
しかし大学受験が終わり、志望校を決める時。
神田琴江は東條煌真が地元以外の大学に行くことを絶対に許さなかった。地元の大学なら何でもいいから、とにかく卒業証書をもらって就職できればいいと考えていた。
遠くの大学に行って視野が広がり、野心を持つようになって、年老いた両親の面倒を見なくなることを恐れていたのだ。
しかし神田琴江はそれを直接は言わず、家庭が貧しくて良い大学に行かせる余裕がないと言い訳した。