緒方諒真はこの言葉を聞いて、もうダメだと悟った。
梁川千瑠が罪に値するとはいえ、霧島冬真と夏目星澄の関係は元には戻れないだろう。
親友として、慰めるのは当然だ。「今どこにいるんだ?会いに行くよ」
二人は最後にプライベートクラブで会った。
座るなり、霧島冬真はウイスキーを二本注文した。
緒方諒真も命がけで付き合い、一緒に飲み始めた。
二杯ほど飲んで、緒方諒真は感慨深げに言った。「はぁ...お前と義姉さんは、どうしてこんな状況になってしまったんだ?」
霧島冬真はグラスを軽く揺らし、一気に飲み干した。
そうだな、彼と夏目星澄はどうしてこんな状況になってしまったのか...
以前の夏目星澄は彼にとても優しかった。毎朝早起きして朝食を作り、仕事に行く彼を見送り、家で待っていてくれた。
彼が夕食に帰ってくれば、好物を並べて待っていてくれた。付き合いで遅くなった時も、二日酔いの薬を用意してくれていた。
夏目星澄があんなに良い人なのに、どうして大切にできなかったのだろう?
過去を振り返り、霧島冬真は胸が詰まる思いで、また一杯を煽った。
一度の過ちが全てを狂わせた。最初から間違っていた。取り返しのつかないほどの大きな過ちを犯してしまった。
彼と夏目星澄がこうなったのは、全て自業自得だ!
緒方諒真は彼の苦しみを察し、杯を重ねた。
すぐにウイスキー一本が空になった。
緒方諒真は酔いが回り、饒舌になっていった。「最初は義姉さんがお前の金目当てだと思ってたけど、後で物欲なんてないことが分かった。それにお前のことをずっと大切にしてくれてた。梁川千瑠が突然帰国して、二人を離婚に追い込まなければ、きっと...」
「それに今は子供まで失って、義姉さんは本当にお前を許せないんじゃないか...」
彼は霧島冬真の親友だが、正直に言えば、誰がこんな目に遭っても受け入れられないだろう。
特に女性は母性本能が強い。子供は命より大切な存在だ。
命より大切なものを失えば、他のことなど気にならなくなる。
霧島冬真は俯いて、嗄れた声で呟いた。「分かってる。全て俺が悪い」
次々と杯を重ねるうちに、霧島冬真は感覚が極限まで研ぎ澄まされ、胸が刺すように痛んだ。
緒方諒真は深いため息をつき、首を振った。
彼は霧島冬真と幼なじみで、冷静で情に薄い性格をよく知っていた。