第306章 私が彼女を連れて行く

霧島冬真は気にせず、女を追いかけることに公平なんてないと思った。

ましてや追いかけているのは妻なのだから。

しかし、花井風真も正人君子というわけではない。

当時、夏目星澄が自分の子を身ごもっていると知りながら、なお執着し続けた。

お互い様というところだ。

霧島冬真の表情が徐々に暗くなり、「もういい、言い訳を探すのはやめろ。星澄が私と離婚したからといって、お前と一緒になるとでも思っているのか」

「彼女の心の中に誰がいるのか、お前も私もよく分かっているはずだ!」

そう言うと、花井風真を無視して、すぐに星澄を抱き上げた。

夏目星澄は突然の浮遊感に、思わず目を見開いた。

そして見慣れた顔を見て、小さな声で呟いた。「霧島冬真?」

夏目星澄の声は小さかったが、酔っていたせいで、無意識に甘えた調子が混ざっていた。