第305章 これは良いチャンスだ

芦原悠青は芦原家の末っ子で、幼い頃から甘やかされて育った。

遊び上手で、美食にも詳しかった。

お金に困ることもなかった。

しかし、芦原家の当主が突然重病になってから、家の中の空気が一変した。

芦原悠青は周りの人々にとって目の上のたんこぶとなり、当主が興奮して芦原家の経営全てを芦原悠青に任せてしまうのではないかと恐れられた。

家の二人の兄は、芦原悠青を敵とみなし、いつか彼が成功を収めて家族の支持を得ることを恐れていた。

そして芦原悠青は、兄たちに次々と裏切られた後、やっと気づいた。後半生を快適に過ごすためには、芦原家で確固たる地位を築き、軽視されないようにしなければならないと。

だから霧島冬真が彼にビジネスの提携を持ちかけてきたと聞いた時、心に決めていた。

霧島家の資本を借りて、自分の道を切り開こうと。

芦原悠青と霧島冬真の関係は、緒方諒真と林田真澄ほど親密ではなかったが、少なくとも敵対関係ではなかった。

彼は本当に霧島冬真を友人として見ていた。

また、信頼できる人物でもあった。

「冬真さん、ご存知ないかもしれませんが、今うちは特殊な状況なんです。兄たちは私を虎視眈々と狙っています。今は当主がまだ生きているから、私に何もできませんが、当主が亡くなった日には、私の芦原様としての立場も終わりでしょう。だから、どうしてもあなたの助けが必要なんです。」

霧島冬真は芦原家の事情をある程度聞いていた。

芦原悠青はずっと遊び人で、上には二人の兄が家の大小の事を取り仕切っていた。

元々は平和だった。

しかし、ここ数年、当主の体調が悪化し、芦原悠青に家を任せる意向を示したことで、二人の兄が様々な悪だくみを始めた。

芦原悠青も自衛のために、あるいは将来の芦原家の争奪戦に向けて基盤を築くために、この提携を必要としていた。

もし芦原家と長期的な安定した提携関係を結べれば、霧島家にとっても良いことだった。

「で、私にどう助けて欲しいんだ?」

芦原悠青はすぐに自分の考えを話し始めた。「こういうことなんです。郊外に土地を買って、国内最大のアミューズメントシティを作ろうと考えています。潮見市のドリームキャッスルのような感じですが、このプロジェクトの初期投資が膨大で、私一人では負担できません。ちょうどパートナーを探していたところに、あなたが来てくれて...」