夏目星澄が振り返ると、そこには霧島冬真がいた。
彼は何も言わずに近づいてきて、花井風真の体を肩に担いだ。
夏目星澄は実は霧島冬真に手伝ってもらいたくなかったが、帝都では彼女も神田晓良も土地勘がなかった。
霧島冬真がいれば、多くの面倒を省くことができる。
夏目星澄はもう悩むのをやめ、ホテルの外へタクシーを拾いに走った。
車内。
霧島冬真は花井風真を後部座席に座らせ、夏目星澄は花井風真の隣に座った。
神田晓良は助手席に座り、不安そうな表情で運転手に急ぐよう促した。
花井風真は熱で朦朧としていた。「星澄、どこにいるんだ星澄、なぜ電話に出ないんだ。」
夏目星澄は病気の彼が自分のことを気にかけているのを見て、胸が痛くなった。
思わず花井風真の反対側にいる霧島冬真を睨みつけた。