第311章 感動するのは自分だけ

夏目星澄が振り返ると、そこには霧島冬真がいた。

彼は何も言わずに近づいてきて、花井風真の体を肩に担いだ。

夏目星澄は実は霧島冬真に手伝ってもらいたくなかったが、帝都では彼女も神田晓良も土地勘がなかった。

霧島冬真がいれば、多くの面倒を省くことができる。

夏目星澄はもう悩むのをやめ、ホテルの外へタクシーを拾いに走った。

車内。

霧島冬真は花井風真を後部座席に座らせ、夏目星澄は花井風真の隣に座った。

神田晓良は助手席に座り、不安そうな表情で運転手に急ぐよう促した。

花井風真は熱で朦朧としていた。「星澄、どこにいるんだ星澄、なぜ電話に出ないんだ。」

夏目星澄は病気の彼が自分のことを気にかけているのを見て、胸が痛くなった。

思わず花井風真の反対側にいる霧島冬真を睨みつけた。