夏目星澄は今、恥ずかしさと怒りが入り混じっていた。彼が怪我だらけでなければ、躊躇なく突き飛ばしていただろう。
しかしその時、半分眠ったような声が聞こえた。「目が覚めたの?どこに行くの?」
夏目星澄はその声を聞いて、思わず心が柔らかくなった。
しかし二人の今の関係を考えると、態度は少し強くなった。「洗面に行きたいの。すぐに看護師が薬の交換と注射に来るから、早く手を離して、降ろして。」
霧島冬真は手を放す気配すらなく、むしろ夏目星澄の柔らかい肌を何度も撫でた。
夏目星澄は触れられた場所が熱くなり、体が思わず微かに震えた。
霧島冬真は偶然、夏目星澄の前回の帝王切開の傷跡に触れ、急に体が硬くなり、気持ちも沈んだ。「ここ...まだ痛むの?」
「もう全然痛くないわ。」夏目星澄は霧島冬真が何を聞いているのか理解し、冷たい表情で起き上がり、彼を強く押しのけた。「早くあなたのベッドに戻って。」
霧島冬真の心には今、限りない後悔の念が湧き上がった。あの事故さえなければ、どんなによかったことか。
今頃は三人家族になっていたはずだ。
夏目星澄が痛くないと言えば言うほど、彼の心は痛んだ。
「何を...するつもり?」夏目星澄が起き上がったところを、霧島冬真に肩を押さえつけられた。
動きが大きすぎて、彼の体の傷がいくつか開いてしまった。
しかし彼は構わず夏目星澄の服を引っ張った。
夏目星澄は反射的に抵抗した。「霧島冬真、朝早くから発狂しないで、早く離して!」
「星澄、暴れないで、傷跡を見たいだけだ。」
「見る必要なんてないわ。傷はもう治ってるの。それより、あなたの方が血が滲んでるじゃない!」
「ちょっとだけ見せて。」
当時、夏目星澄が手術を受けた時は、まさに九死に一生だった。子供を失い、彼女の体にも大きなダメージを与え、あんな大きな傷跡まで残った。
今考えると、耐えられないほどの苦痛を感じる。
夏目星澄が抵抗している最中、ドアがノックされ、看護師が入ってきた。「霧島さん、夏目さん、お薬の交換に...あっ!」
薬盤を持った若い看護師は、ベッドの上で男性が女性の服を引っ張っている様子を見て、驚いて声を上げ、顔を赤らめて背を向けた。