第335章 彼はやはり霧島冬真より一歩遅かった

夏目星澄は今、恥ずかしさと怒りが入り混じっていた。彼が怪我だらけでなければ、躊躇なく突き飛ばしていただろう。

しかしその時、半分眠ったような声が聞こえた。「目が覚めたの?どこに行くの?」

夏目星澄はその声を聞いて、思わず心が柔らかくなった。

しかし二人の今の関係を考えると、態度は少し強くなった。「洗面に行きたいの。すぐに看護師が薬の交換と注射に来るから、早く手を離して、降ろして。」

霧島冬真は手を放す気配すらなく、むしろ夏目星澄の柔らかい肌を何度も撫でた。

夏目星澄は触れられた場所が熱くなり、体が思わず微かに震えた。

霧島冬真は偶然、夏目星澄の前回の帝王切開の傷跡に触れ、急に体が硬くなり、気持ちも沈んだ。「ここ...まだ痛むの?」

「もう全然痛くないわ。」夏目星澄は霧島冬真が何を聞いているのか理解し、冷たい表情で起き上がり、彼を強く押しのけた。「早くあなたのベッドに戻って。」