翌日、夏目星澄は病院で花井風真の姿を見かけることはなかった。
電話もLINEも何もなかった。
彼女は少し心配になった。
そこで花井風真に電話をかけた。
しかし、電話に出る人はいなかった。
これはどういうことだろう?
霧島冬真は仕事をしながら、横目で夏目星澄を見ていた。
彼女が誰かに電話をかけているのに気付いた。電話は繋がらず、彼女は眉をひそめていた。
誰のことをそんなに心配しているのだろう。まさか花井風真のやつじゃないだろうな?
夏目星澄は少し考えてから林田瑶子に電話をかけた。「瑶子、今忙しい?暇だったら東條煌真が出勤しているか聞いてくれない?電話しても出ないし、LINEの返信もないの。何かあったんじゃないかって心配で」
昨日、黒服の男二人に連れて行かれた時の彼の表情があまり良くなかったことを思い出した。
確かに祖父の差し向けた人だと言っていたけど、何か隠していることがあるような気がしてならなかった。
林田瑶子は快く承諾した。「わかった、聞いてみるわ。後で連絡するね」
電話を切ったばかりのところで、霧島冬真の不満げな声が聞こえた。「なんで花井風真のことをそんなに心配するんだ?」
夏目星澄は携帯を置き、彼を横目で見た。「彼は私の友達よ。心配するのがいけないの?」
霧島冬真は探るように尋ねた。「ただの心配で、他意はないんだな?」
夏目星澄は答えようとしたが、必要ないと思い直した。「それは...あなたには関係ないでしょう?」
霧島冬真は望んでいた答えが聞けず焦った。「星澄、どうして関係ないんだ。まさか本当に彼のことが好きなのか?じゃあ俺はどうすればいい!」
夏目星澄は眉を上げた。「どうすればいいって、どういう意味?」
「星澄、俺の気持ちがわかるだろう。俺は君のために崖から飛び降りる覚悟もあったんだ。まだ俺の気持ちがわからないのか?」
「つまり、命の恩を返せって言うの?」
霧島冬真は夏目星澄の誤解を恐れ、急いで説明した。「違う、そういう意味じゃない。ただ俺のことをもっと見てほしい、考えてほしい。もう一度チャンスをくれないか。花井風真のことは気にしないでくれ。彼には君と結婚する勇気なんてないんだ!」
花井家はとても伝統的で、嫁に対する要求も厳しい。
どう考えても、夏目星澄が離婚歴があるのは紛れもない事実だ。