第339章 感動は愛を意味しない

霧島冬真のことをどう思っているの?

夏目星澄の感情は一気に複雑になった。

彼女は今、この男性に対して一体どんな感情を抱いているのか、自分でもよく分からなかった。

梁川千瑠は死に、彼は崖から飛び降りて自分を救ってくれた。

彼への憎しみは随分と減り、そして愛は...

夏目星澄は首を振って、「分からない...」

林田瑶子は彼女の悩ましそうな様子を見て、考えてから諭すように言った。「以前は梁川千瑠のことで二人の間に色々と問題があったけど、今は彼女も亡くなったし、あなたたちの関係についてもう一度考え直してみたら?」

「霧島冬真はあなたのことを本当に大切に思っているわ。他のことは置いておいても、今回あなたを救うために自分の命さえ投げ出せるなんて、他の男性にはそこまでできないでしょう。」

「彼は霧島グループの社長よ。もし彼に何かあったら、霧島グループにとって壊滅的な打撃になるかもしれない。これは完全に結果を考えずに...」

林田瑶子が兄にこの件について話した時、兄も信じられないという表情を浮かべていた。

一般の人の生死は、おそらく家族や恋人の間でのみ深い苦痛をもたらす。

しかし霧島冬真が本当に死んでいたら、一つの出来事が全体に影響を及ぼすように、霧島家と利害関係のある全ての事や人々が大きな影響を受けることになっただろう。

だから林田真澄は一言、もし自分だったら、たとえ最愛の女性のためでも、そんなリスクは冒さないと言った。

林田真澄も、同年代の中で最も落ち着いていて感情が希薄に見えた人が、ある日一人の女性のために自分の命さえも顧みなくなるとは思わなかった。

林田瑶子はその時、兄のその言葉を聞いて、霧島冬真への見方がまた大きく変わった。

今は夏目星澄がどんな態度を取るのか分からない。

夏目星澄は眉をしかめ、少し悩ましげに言った。「彼が何か起こったら、結果がどれだけ深刻になるか分かっているわ。彼が私のためにここまでしてくれたことに感動しないはずがないけど、でも感動は愛とは違うでしょう?」

「だから今、霧島冬真に対してどんな感情を抱いているのか言えと言われても、はっきりとは言えないの。時間が経てば、最初ほど彼を憎むことはなくなるかもしれない。でも、それ以外のことはまだ考えられていないわ。」