第356章 病危通知書

神田晓良は霧島冬真を見るなり心の支えを見つけたかのように、すぐに先ほどの状況を説明し始めた。

「どういうわけか分からないんですが、星澄さんの乗っていた馬が突然暴れ出して、山の方へ行ってしまって、もう姿が見えなくなってしまいました。」

霧島冬真はそれを聞いて、すぐに事態の深刻さを悟った。

すぐさま馬小屋へ走り、黒馬に跨って、夏目星澄が消えた方向へ追いかけていった。

後ろについてきた大谷希真は、それを見てひどく驚いた。

霧島冬真の体の傷はまだ回復期にあり、激しい運動は絶対に避けなければならないはずだった。感染すれば命取りになりかねないのだ!

しかし彼は馬に乗れないし、霧島冬真を止めることもできず、救援を呼ぶしかなかった。

撮影クルーの人々も皆後を追った。

その時の夏目星澄には、馬から落ちないようにするという一つの信念しかなかった。

落ちれば死なないまでも重傷は免れないだろう。

パニックと恐怖の感情が彼女の頭の中を支配していた。

両手も手綱を強く引きすぎたせいで血まみれになり、心が引き裂かれるような痛みを感じていた。

しばらくすると、手の中の手綱が滑り落ちてしまった。

体の重心を制御できず、馬から振り落とされそうになった瞬間。

後ろから霧島冬真の声が聞こえた。「星澄、怖がるな、馬の首をつかめ、落ちるな!」

夏目星澄は幻聴かと思った。

しかし次の瞬間、霧島冬真の姿が彼女の横に現れた。

夏目星澄は自分の目を疑った。

話す暇もなく、歯を食いしばって必死に馬の首にしがみつき、なんとか体勢を保った。

しかし下の馬は止まる気配を全く見せなかった。

霧島冬真は夏目星澄の今の状況が非常に危険だと分かっていた。これ以上救出が遅れれば、馬から振り落とされてしまうだろう。

彼は黒馬の脇腹を締め、できるだけ夏目星澄に近づき、自分の馬に引き寄せようとした。

しかし近づくたびに、夏目星澄の馬は逃げてしまう。

何度か試みたが全く上手くいかなかった。

夏目星澄も次第に力尽きてきた。「も...もう無理...つかまっていられない...」

霧島冬真は心の中で焦りを感じながらも、表情は冷静さを保っていた。「大丈夫だ、怖がるな、今すぐ助けに行く。」

この時、誰か反対側から馬を止められる人がいればいいのに。