霧島峰志が怒ろうとした時、救急室のドアが開き、医師が慌てて出てきて言った。「患者さんのご家族はいらっしゃいますか!」
霧島峰志と水野文香は即座に駆け寄り、「私たちが両親です」と答えた。
医師は深刻な表情で言った。「申し上げますが、患者の状態は非常に深刻です。傷口が感染して発熱し、大量出血もしています。当院の血液バンクにあるAB型の血液は400ccしか残っておらず、全く足りません。他の病院に融通を依頼していますが、皆様も献血者を探していただけないでしょうか」
「それと、これは病状危篤の同意書です。ご署名をお願いします」
その言葉を聞いた霧島峰志は、よろめいて倒れそうになった。
「会長!」大谷希真が素早く支えた。
霧島峰志は心を落ち着かせて言った。「私はAB型です。息子に提供できます」
医師は首を振った。「それは不可能です。直系親族間の輸血は溶血を起こす可能性があります。他の方法を考えてください。まずはこちらにご署名を」
霧島峰志は生涯で数え切れないほどの署名をしてきたが、この病状危篤の同意書に署名する時ほど、手が震えたことはなかった。
このような事態は、4年前にも一度経験していた。
そして今回はさらに辛かった。
医師が去った後、霧島峰志は即座に大谷希真に指示を出した。「すぐに会社に戻って、AB型の社員全員を集めて献血に来てもらいなさい。献血した人には一人1万円の報奨金を出す。急いで!」
大谷希真は深刻な面持ちで頷いた。「はい、霧島会長。すぐに手配します。30分以内に必ず戻ってきます」
しかし待つ時間は長く感じられた。
大谷希真が戻ってくる前に、もう一度病状危篤の同意書に署名することになった。
幸い彼の仕事は手際よく、1時間後には霧島冬真に必要な血液が供給された。
手術も順調に進んでいった。
そしてついに夜明け前に、手術は成功した。
疲れ切った様子で手術室を出てきた医師は、霧島峰志に告げた。「患者さんは一時的に生命の危機を脱しました。ICUで経過観察が必要です」
霧島峰志は緊張した面持ちで尋ねた。「いつ目覚めるのでしょうか?」
医師もこの時点では正確な答えを出せず、「それは何とも言えません。様子を見るしかありません」
霧島峰志はそれ以上追及せず、「分かりました。ありがとうございます」と言った。