第358章 なぜ彼女の心はこんなに痛むのか?

大谷希真は夏目星澄を支え起こし、「夏目さん、あなたはこの状態ではそう遠くまで歩けませんよ。それに...それに霧島社長は今、集中治療室で意識不明の状態です。行っても意味がありません。それに会長と会長夫人が付き添っているので、大丈夫ですから」

夏目星澄はその言葉に一瞬驚いた。「おじさまとおばさまが来られたんですか?」

つまり、霧島冬真の怪我は親族に連絡が必要なほど重症だということだ。

夏目星澄は真っ赤な目で大谷希真を見つめ、「どうしてこんなに重傷を負ったんですか?」

大谷希真は困惑した様子で、真実を話すべきかどうか迷っていた。

話せば彼女の感情を刺激して病状が悪化するのではないかと心配だが、話さなければ霧島社長の怪我が報われない。

夏目星澄は待ちきれず、声を荒げて言った。「一体どうなったんですか、話してください!」

「霧島社長はあなたを救うために、自分の体を完全にクッションにしたんです。彼の足は粉砕骨折で、古傷が癒えないうちに新しい怪我を負い、細菌感染を起こして高熱を出し、手術室で一晩中救命措置を施して、やっと一命を取り留めましたが、まだ意識不明の状態です...」

大谷希真は一言一言に恐怖を感じていた。特に医師から危篤通知書が出された時は。

これほど恐怖を感じたことはなかった。まばたきする間に、霧島冬真が...

今は一命を取り留めたものの、まだ危険期を脱していない。いつ目覚めるかも分からない状態だ。

彼は若くて体力があるから持ちこたえられるが、会長と会長夫人が気の毒だ。あの年齢で、ずっと心配で眠ることもできない。

それなのに、会長夫人は夏目星澄の状態を心配して、自分に様子を見に行かせたのだ。

他の家庭なら、とっくに怒鳴り込んでいただろう。

夏目星澄は大谷希真の話を聞き終わると、恐怖で体が震え始めた。

彼女がいなければ、霧島冬真がこんな怪我を何度も負うことはなかった。

以前は彼をひどく憎んで、死んでほしいとまで思っていた。

今、彼が本当に死にそうになっているのに、突然、彼を失いたくないと気づいた。

「大谷さん、私を連れて行ってください、お願いです!」

「だめです、夏目さん、あなたの体は...」

夏目星澄は目の前で制止しようとする男性を押しのけた。「もういいです、連れて行ってくれないなら、自分で行きます。這ってでも行きます!」