第359章 自分を欺けない

水野文香は彼女があまりにも悲痛に泣いているのを見て、自分も涙を抑えられなくなった。

霧島峰志は彼女たちが泣くのを見て、自分も涙をこらえきれなくなりそうだった。

しかし、彼は男だ。理性を保たなければならない。この時に混乱してはいけない。

夏目星澄は泣きすぎて気を失いそうになるまで泣き続けた。水野文香が彼女を抱きしめて慰めてくれたおかげで、ようやく少し落ち着きを取り戻した。

しかし、閉ざされた手術室を見つめると、夏目星澄はまた涙を抑えられなくなった。

手術がどれだけ続くかわからず、水野文香は夏目星澄の体を心配して、一度休みに帰るよう勧めた。

しかし夏目星澄は強く拒否した。一度ここを離れたら、もう二度と霧島冬真に会えなくなるのではないかと恐れていた。

こうして、彼らは手術室の前で丸六時間待ち続けた。

ついに手術室のドアが開き、霧島冬真の手術を担当した医師が疲れた表情で出てきて、マスクを外した。

夏目星澄は力を振り絞って立ち上がった。大谷希真が車椅子を押してくるのを待てず、すぐに霧島冬真の状態を知りたかった。

「先生、霧島冬真の状態はどうですか?」

医師は彼女が歩くのもままならず、転びそうなのを見て、親切に支えながら言った。「ご家族の方、慌てないでください。話を聞いてください。一命は取り留めましたが、まだ危険期を脱していません。さらに細菌感染が深刻なため、無菌治療が必要です。すぐにICUに移します。」

霧島峰志と水野文香もすぐに近寄って尋ねた。「面会はできますか?」

「今日は難しいですね。最低でも24時間の経過観察期間が必要です。状態が安定していれば短時間の面会は可能ですが、一度に入室できるのは一人だけです。」

霧島峰志は眉をひそめた。「全員で入ることはできないのですか?」

医師は説明した。「申し訳ありません、霧島会長。これは病院の規則です。無菌室なので、入室者が多いと治療に影響が出ます。そのため一度に一人しか入れません。どなたが入室するか、事前にご相談の上、看護師に登録していただければと思います。」

霧島峰志は理解を示しながら言った。「わかりました。ありがとうございます。」

医師は霧島家の方々の身分をよく知っていたので、当然おろそかにはできなかった。「霧島会長、お気遣いありがとうございます。私どもの務めです。では、失礼いたします。」