第372章 私は既に花井風真と約束した

第三百七十二章

霧島冬真は本来盗み聞きするつもりはなかった。

しかし、花井風真という名前を聞いた途端、思わず緊張してしまった。

あいつはなぜいつもつきまとってくるのか。

自分には夏目星澄を守る力がないことを、あいつは分かっているはずなのに。

花井お爺様はあんなに封建的な人なのに、どうして花井風真と夏目星澄の関係を簡単に認めるはずがあるのか。

これは誕生日会への招待なんかじゃない、罠に違いない!

ダメだ、星澄にこんな危険を冒させるわけにはいかない。

夏目星澄は霧島冬真ほど深く考えていなかったが、彼が電話を盗み聞きしたことに不満を示した。「なぜ私の話を盗み聞きするの?」

霧島冬真は平然と説明した。「盗み聞きしたわけじゃない。風が出てきたから寒くないか心配で声をかけようと思っただけだ。たまたま聞こえただけだ。それで、行くつもりなのか?」

夏目星澄は頷いた。「うん、もう風真くんに約束したから」

霧島冬真は彼女が本当に行くと聞いて、心が痛んだ。「行かないでくれないか?」

「どうして?」

「僕は君なしでは生きていけない。いつも全てを君に頼ってきた。他の人では慣れない。特に...特に個人的な問題を解決する時は」

夏目星澄はそれは問題ではないと思った。「そんなに長くはかからないわ。もし本当に必要な時は、大谷さんに手伝ってもらえばいい。後で電話して、明日数時間代わりに来てもらうように頼むわ」

霧島冬真はまだ拒否した。「ダメだ。大谷は仕事が忙しくて、来る時間なんてない」

夏目星澄は彼がこれほど反対する理由が分かり、苦笑いしながら言った。「気にしすぎよ。ただご挨拶に行って、花井お爺様との誤解を解いて、せいぜい食事をするだけ。すぐに戻ってくるから、心配しないで」

霧島冬真は眉をひそめた。「心配しないわけがない。前回、風真が家から逃げ出して君を探しに来た時、彼の家族が彼を捕まえようとして、君が巻き添えになりそうになった。それに、お爺様の君に対する態度もよくない。行けば危険かもしれない」

夏目星澄は霧島冬真が物事を複雑に考えすぎていると感じた。「お爺様のお誕生日という大切な日に、私に何かするような暇なんてないわ。それに、たくさんの人がいるはずだから、私のことを気にしなくても、他の人の目があるでしょう。安心して」