第388章 福に恵まれない

霧島冬真と夏目星澄が去った後。

花井家の応接室は突然静寂に包まれた。

その場にいた人々は互いに顔を見合わせ、誰も口を開く勇気がなく、大きな息すら出来なかった。

花井正道は残された体面を保つため、何度も深呼吸をした後、何事もなかったかのように皆に向かって言った。「皆様、申し訳ございません。お笑い種をお見せしてしまいました。宴会を続けましょう。どうぞごゆっくりお楽しみください」

皆同じ界隈の人間だったので、花井家の醜態を目の当たりにしても、主催者の前で嘲笑うことはなかった。

むしろ非常に協力的に宴会を続け、次々と花井正道に長寿の祝いを述べ、先ほどの不愉快な出来事など無かったかのように振る舞った。

しかし、この誕生日会は長くは続かなかった。

多くの人々が次々と様々な理由をつけて退席していった。