夏目星澄は花井お爺様が自ら和解を求める様子を見て、権力というものは本当に素晴らしいものだと感じざるを得なかった。
どんなに高慢な人でも、頭を下げる時があるものだ。
しかし彼女の心の中では、花井お爺様の態度がこれほど早く変わったのは、全て霧島冬真のおかげだということもわかっていた。
今日、もし彼が出てこなかったら、謝罪の言葉さえ聞けなかっただろう。
霧島冬真は芦原蘭の謝罪など望んでいなかったし、花井正道の態度など気にもしていなかった。
彼が気にかけていたのは、ただ夏目星澄の気持ちだけだった。
そこで、隣にいる夏目星澄を見上げ、優しい声で尋ねた。「どう思う?」
夏目星澄は以前と同じ考えで、芦原蘭を許すことはできなかった。
彼女は率直に花井お爺様の目を見つめ、「申し訳ありませんが、花井お爺様、お断りします。それに、お話ししたいことがあります」と言った。
花井お爺様は眉を少し上げ、興味深そうに「いいだろう、聞かせてもらおう」と言った。
「なぜ離婚経験者にこれほど偏見を持っているのかはわかりませんが、離婚は間違いではありません。結婚と同じように、愛のために結婚する人もいれば、利益のために結婚する人もいます。離婚も同じで、それらは平等なものです」
「お年寄りとして、私に対するどんな意見でも受け入れられます。でも、ただ私が離婚経験者というだけで、私のすべてを否定し、人格を侮辱することはできません」
花井正道は眉をひそめながら聞いていた。「なるほど夏目さん、私にそれほどの恨みを持っていたとは。つまり、私にも謝罪してほしいということですか?」
夏目星澄は淡々とうなずいた。「はい、謝罪していただくべきです」
その言葉を聞いて、その場にいた人々は騒然となった。
この夏目星澄は度胸が据わっているな、花井お爺様に謝罪を求めるなんて、礼儀知らずもいいところだ。
その場で驚かなかったのは、おそらく霧島冬真だけだった。
これこそが彼の知っている夏目星澄だった。
彼女は見かけほど弱くはなかった。
花井正道はその言葉を聞いて一瞬驚き、その後笑い出した。「夏目さん、本当に目を見開かせてもらいました。私に謝罪を求めるとは。では、私が謝罪すべき理由を聞かせてください」