夏目星澄と霧島冬真はこの時、病室に戻っていた。
車椅子での移動で何度も苦労し、痛みで冷や汗が出て、顔色も随分と青ざめていた。
ただ、夏目星澄を心配させないように、痛いという言葉は一言も口にしなかった。
しかし夏目星澄は目が見えているので、それがわかっていた。
霧島冬真がようやくベッドに横たわった時、すぐにお湯を用意し、タオルを絞って、彼の体を拭いてあげた。
霧島冬真は最初、少し恥ずかしがって断ろうとした。「大丈夫だよ」
夏目星澄は聞く耳を持たず、彼の服をめくって拭き始めた。
「何が大丈夫よ。見てごらんなさい、痛くて汗びっしょりじゃない。強がってばかり」
足を拭く時、夏目星澄の心が痛んだ。より慎重に拭きながら「痛い?」と尋ねた。
霧島冬真は淡々とした口調で「痛くない」と答えた。