第393章 自ら誘惑しに来る

花井芳子は気にせずに言った。「何を心配しているの?お父さんがいるじゃない。私が頼めば、きっと助けてくれるわ」

芦原蘭は自分が花井正道に追い出されたことを、彼女に告げる勇気がなかった。

そのため花井芳子は車椅子に座ったまま、芦原蘭を連れて花井家に戻り、花井正道に事態の解決を求めた。

花井正道は芦原蘭を見た途端、頭が痛くなった。「私には関係ない。自分で蒔いた種だ。自分で責任を取るべきだ」

花井芳子は驚いた表情で「お父さん、何を言っているの?私たちは家族でしょう。お父さんが助けてくれないなら、誰が助けてくれるの?」

「お前の素晴らしい娘が、昨日の私の誕生祝いで何をしたか知っているのか?」

「花井風真が連れてきたあの女を少し罵っただけじゃない。どうせお父さんもあの女のこと嫌いなんでしょう。罵ったくらいで、大したことないわ」

花井芳子が知っていることは、すべて芦原蘭の口から出たものだった。

昨日の出来事がどれほど深刻な結果を招くか、まったく認識していなかった。

「そんなに大したことないと思うなら、なぜ私に助けを求めに来たんだ?」

「あの女に厳しい元夫がいるからよ。本当に弁護士に蘭を訴えさせたの。まだこんなに若いのに、どうして刑務所に入れられるの?お父さん、お願いだから、蘭を助けて」

花井正道は心身ともに疲れた様子で言った。「私は年を取った。もうそんなことには関われない。娘を刑務所に入れたくないなら、霧島冬真に会いに行け。彼が許してくれれば、この件は終わりだ」

そう言うと、花井芳子と芦原蘭の相手をするのを止め、直接部屋に戻った。

花井芳子がまだ追いかけて対処法を聞こうとしたとき、

執事に止められた。「ご主人様の具合が悪く、血圧が120を超えています。二小姐、これ以上ご主人様を困らせないでください。もし入院することになれば、誰もその責任を負えません」

花井芳子はようやく歯を食いしばって諦めた。

そして今度は兄の花井剛に電話して助けを求めた。

しかし電話は秘書が出て、重要な会議で外出中のため電話に出られないと言われ、用件があれば伝言を預かると言われた。

花井芳子は部外者に花井家の恥を見せたくなかったので、何でもないと言って電話を切った。

最後は仕方なく、霧島冬真に許しを請うしかなくなった。