第408章 脅すのは誰でもできる

霧島冬真は夏目星澄に断られ、胸が締め付けられた。「でも、リハビリが終わるまで一緒にいてくれると約束したじゃないか」

夏目星澄は少し躊躇した後、本当のことを話した。「確かに約束したけど、今は特別な事情があって。お母さんを連れて帰ってきたの。体調が良くなくて、近いうちに手術が必要なの。そばで看病しないといけないの」

霧島冬真は夏目星澄がようやく肉親を見つけたことを知っており、母親のことを心配するのも理解できた。

「おばさんの病気は深刻なの?私から誰かに診てもらうように手配しようか?」

霧島冬真は今の体調が良くなければ、自ら行って手配するところだった。そうすれば「義理の母」に良い印象を与えられたかもしれない。

しかし夏目星澄は今、母親に霧島冬真のことを知られたくなかった。

「大丈夫よ。瑶子が既に医者を手配してくれたから。母の体調が少し良くなれば手術ができるし、介護士も頼んであるから、全部準備できてるの。心配しないで」

「それはダメだ。林田瑶子が見つけた医者より、私が手配する医者の方が優秀だ。おばさんの面倒を見させてくれないか」

夏目星澄は霧島冬真の気持ちを理解していた。彼女が母親のところに行ってしまって来なくなることを心配しているのだ。そこで優しく慰めた。「あなたも患者なのに、どうやって人の面倒を見るの?気持ちは嬉しいけど、まずは自分の体を大事にして。時間があれば会いに来るし、リハビリにも付き添うわ」

霧島冬真は夏目星澄の考えに同意する以外になかった。「わかったよ...」

その夜、夏目星澄は霧島冬真と夕食を共にした後、帰っていった。

そのとき大谷希真は調査をほぼ終えており、霧島冬真に報告に来た。

「社長、若奥様の実の両親の件ですが、少し複雑です。母親の松岡静香さんは四年前から寝たきりになっています。事故が原因だと言われていますが、調査によると人為的な可能性が高いようです。ただ、若奥様の母は遠方から嫁いできて身寄りがなく、寝たきりになった件も追及する人がいなかったため、うやむやになってしまったようです」

霧島冬真は眉をひそめた。「星澄には叔母がいるんじゃなかったのか?実の姉が寝たきりになったのを、ただ見ていたというのか?」