霧島冬真は夏目星澄が目を覚ましたのを見て、思わず目が潤んでしまった。「星澄、今どう?具合の悪いところはない?」
夏目星澄は軽く首を振った。「特に具合の悪いところはないわ。でも、あなたの目が赤いけど、泣いてたの?」
霧島冬真は確かに泣いていたが、そんな恥ずかしいことを夏目星澄に知られたくなかった。「いや、君のことが心配で一晩眠れなかっただけだ」
夏目星澄はそれ以上追及せず、体を動かして起き上がろうとした。
霧島冬真はすぐにベッドサイドのリモコンを押して、ベッドをゆっくりと起こした。
夏目星澄は無意識に手を怪我した部分に置いた。「私の怪我、大したことないでしょう?医者は退院できる時期について何か言ってた?」
霧島冬真は眉をひそめた。「どうして大したことないと言える?病院に運んだ時、君は失血性ショックを起こしていたんだぞ!」
「なんてバカなことをしたんだ。俺の代わりに刃を受けるなんて。内臓に当たらなくて良かった。もし万が一のことがあったら、俺はどうすればよかったんだ?」
霧島冬真のその様子を見て、夏目星澄の心は締め付けられるような思いになった。思わず慰めの言葉を口にした。「あの時、あなたも私を救うために何も考えずに飛び出したでしょう。私もそんな風に考えていただけよ。幸い、神様が私を助けてくれたの」
「ごめん、星澄。俺が守れなかった。あの時、あの野郎を殺すべきだった」霧島冬真の深い瞳に冷酷な光が走った。
夏目星澄は霧島冬真に自責の念を抱かせたくなかった。「これは事故よ。誰も望んでいなかったことだわ。そうだ、坂口嘉元はどう?私を助けようとして、あの男と戦って、かなり怪我をしたみたいだけど」
霧島冬真は実際のところ、その男のことを話したくなかったが、夏目星澄が尋ねたので答えざるを得なかった。「坂口嘉元は肋骨を折られた。手術は終わって、一ヶ月ほど休めば良くなるだろう」
肋骨が折れた!
夏目星澄は表情を引き締めた。「そんなに重症だったの?どの病室にいるの?会いに行きたいわ」
「君も重傷なんだ。医者は安静にするように言っている。坂口嘉元のことは心配しなくていい。看護は手配してある」
さらに大谷希真を通じて高額な見舞金も渡した。
しかし彼は受け取らなかった。夏目星澄を救ったのは自分の意思だったので、何の補償も求めないと言った。