第419章 彼のために刃を受ける

後ろから追いかけてきた緒方諒真は事態の深刻さを察し、その狂気じみた変態男が逃げようとするのを見て、急いで追いかけた。

霧島冬真は星澄の様子を心配そうに観察しながら、「星澄、大丈夫か？どこか怪我してないか？」と尋ねた。

夏目星澄は霧島冬真の声を聞いて、やっと先ほどの恐怖から解放された。「私は大丈夫。早く嘉元を見てあげて。私を助けようとして、あの男に殴られたの。早く病院に連れて行って」

霧島冬真は星澄が無事だと聞いて、やっと安堵の息をついた。

彼は気持ちを落ち着かせ、何度も星澄の体に怪我がないか確認した。

薄暗い廊下で、夏目星澄の白い頬に赤い腫れが浮かんでいた。明らかに強く殴られた跡だった。

霧島冬真の目に、凍てつくような血の色が浮かんだ。

彼は地面の杖を拾い上げ、手の甲に青筋を立てながらも、星澄には優しく言った。「ここで待っていてくれ。様子を見てくる。すぐ戻る」

夏目星澄は霧島冬真の様子がおかしいと感じ、止めようとしたが間に合わなかった。

外では既に緒方諒真と男の格闘する音が響いていた。

しばらくすると、男の骨を打つ鈍い音と、悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。

しかし殴打の音は止まることなく、一打ちごとに激しさを増していった。

広大な地下駐車場に、その音が響き渡った。

男は全身の骨が折れたかのように、ぼろ切れのように地面に動かずに横たわっていた。

緒方諒真はしばらく見ていたが、やがて止めに入った。「もういい、冬真さん。これ以上やったら殺人になってしまう」

しかし霧島冬真には止める気配がなく、本気でその男を殺すつもりだった。

夏目星澄はふらつきながら、めまいのする頭を抱え、捻挫した足を引きずりながら、霧島冬真を探しに外に出た。

外での男の惨状を目にし、思わず叫んだ。「霧島冬真...霧島冬真！」

霧島冬真の手にした杖からは血が滴り落ちていたが、突然星澄に名前を呼ばれ、その血に飢えた眼差しにようやく清明さが戻った。

彼は傲慢で冷酷な表情で、地面に倒れた男の血まみれの頭を足で踏みつけ、高級な黒い革靴でゆっくりと踏みにじった。「畜生め、お前は本当に死ぬべきだ！」

霧島冬真は罵り、靴底の濃い血痕が男の頬に汚れた跡を残した。もう片方の足に力が入れられないのでなければ、必ず蹴り殺していただろう。