第418章 狂気のファン

祝賀会がもうすぐ終わるところで、夏目星澄は顔を出しに戻らなければならなかった。

彼女は霧島冬真とホテルの地下駐車場で待ち合わせることにしていた。

誰かに霧島冬真の車に乗るところを見られないように、全員が帰るのを待ってからエレベーターで降りようと思っていた。

しかし、エレベーターの前には、いつの間にか「点検中」の看板が置かれていた。

両方のエレベーターともそうだった。

幸い3階は高くないので、階段で降りても大丈夫だった。

夏目星澄は着ているイブニングドレスが少し床に引きずり、ハイヒールを履いていたので歩きにくかった。

1階に近づいた時、下から足音が聞こえてきて、その足音は次第に早くなり、彼女の心は急に緊張し始めた。

思わず足を速め、早く階段を離れようとした。

しかし、曲がろうとした時、その足音が突然消えた。

夏目星澄の心臓が喉まで飛び出しそうになった。まさか不運にも、何か犯罪者に遭遇してしまったのだろうか?

一人で降りてきたことを後悔し、引き返そうとした瞬間、背後から大きな手が現れ、彼女の手首を掴み、興奮した声で言った。「夏目星澄、本当に君だ!」

夏目星澄が振り返ると、全く見知らぬ男性だった。必死に手を振り払おうとして、「私はあなたを知りません。早く離してください」と言った。

「夏目星澄、僕は君の熱烈なファンだよ。君のことが大好きなんだ。今回の受賞も知ってるし、特別にプレゼントも用意したんだ。きっと気に入ってくれるはずだよ!」男は口を開くと、黄ばんだ歯が見え、目には星澄への欲望が満ちていた。

夏目星澄も相手の精神状態が正常ではないことに気付いた。

できるだけ冷静を保ちながら、「ご好意は嬉しいですが、プレゼントは結構です。私を離してください」と言った。

男は星澄に断られると、たちまち顔つきが険しくなった。「僕のプレゼントを受け取らないって?誰のプレゼントが欲しいんだ?あのパトロンのか?」

夏目星澄も表情を冷たくした。「パトロンだなんて、何を言っているのか分かりません。どいてください、帰ります!」

「帰る?帰るのはいいね。僕と一緒に帰ろう。母さんが既に新居を買ってくれてるんだ。帰ったらすぐに結婚しよう!」男は突然大笑いを始めた。

夏目星澄はこれ以上相手にかかわりたくなく、男を押しのけて出口へ走り出した。