夏目星澄は昨日早朝から霧島冬真を訪ね、その後病院で一日付き添い、撮影クルーに休暇を申請することも忘れていた。
彼女は少し申し訳なさそうに言った。「申し訳ありません監督、こちらの用事が済みましたので、明日には戻れます。」
中村英二は「ああ、待っているよ」と答えた。
霧島冬真は夏目星澄が電話を切るのを待って、尋ねた。「今妊娠しているのに、まだ撮影に戻るつもりなのか?もし胎動があったらどうする?」
夏目星澄は確信を持って言った。「もちろん戻りますよ。妊娠したからといって途中で投げ出すわけにはいきません。安心してください、わかっていますから、絶対に自分が怪我をしないように気をつけます。」
霧島冬真は彼女が非常に責任感のある人だと知っていた。行かせないようにしても、彼女は必ず行くだろう。
「わかった。撮影現場に着いたら必ず気をつけろよ。大谷に頼んでボディーガードを二人つけさせる。」
夏目星澄は撮影現場で特別扱いされたくなかった。「ボディーガードは結構です。そんなに大げさにする必要はありません。撮影現場には晓良がいてくれれば十分です。」
彼女は説得に説得を重ねて、やっと霧島冬真のボディーガード配置の件を思いとどまらせた。
翌日、夏目星澄は早起きして仕事に向かった。
階下に降りると、神田晓良がすでに待っているのを見つけた。
彼女は少し不思議そうに尋ねた。「晓良、どうしてここに?撮影現場で会うって約束したじゃない?」
神田晓良は夏目星澄のお腹をじっと見つめながら、神秘的に言った。「星澄さん、今は特別な状況ですから、私が直接お迎えに来なければと思いまして。」
夏目星澄は神田晓良の表情を見て、自分の妊娠のことを彼女も知っているのだと理解した。
「霧島冬真が話したの?」
「いいえ、大谷補佐から聞きました。昨夜特別に言付かりまして、あなたとお腹の二人のベビーに何か問題が起きないよう、しっかり守るようにと。」
夏目星澄は苦笑いしながら、この大谷希真もきっと霧島冬真の命令を聞いたのだろうと思った。
「わかったわ。じゃあ行きましょう、運転お願いね。」
撮影現場に着くと、神田晓良は密着警護を始めた。
誰かが夏目星澄に挨拶に来るたびに、神田晓良は警戒心満々な目つきでその相手を見つめた。
見られた人々は皆、神田晓良が精神的におかしいのではないかと感じ始めた。